古賀茂明
環太平洋経済連携協定(TPP)を、11カ国で発効させようというアイデア――「TPP11(イレブン)」に一部で期待が高まっている。
トランプ米大統領が離脱を宣言したことで、3年もかけて交渉してきたTPPは空中分解状態となっていた。
しかし、せっかくの多国間の枠組みを腐らせるのは惜しいと、日本政府が音頭を取り、アメリカ以外の11カ国での早期発効の道を探り始めたのだ。
その思惑ははっきりしている。
トランプ政権はTPPに代わる新たな枠組みとして、日本に二国間の自由貿易協定(FTA)の締結を迫っている。
この日米交渉はハードなものになるだろう。

11カ国が一枚岩でないことも、安倍政権にとってはマイナス材料だ。
ベトナムやマレーシアなど、経済規模の小さい参加国はこの新協定に懐疑的だ。
アメリカ抜きのTPPでは大幅な輸出拡大は望めないからだ。
そのことはトランプ政権もよくわかっている。
「TPP11」の早期発効は困難と見透かされ、交渉のテーブルで米側から逆ネジを食らうのがオチだろう。
このカードがあれば、タフな対米交渉を乗り切れるというのは、甘い幻想にすぎないのだ。