フジの屋台番組「不公正」 福岡市BPOに申し立て 局側「表現の自由脅かす」
2017年11月11日 06時00分
https://www.nishinippon.co.jp/sp/nnp/national/article/372693/

 福岡市の屋台の女性店主を主人公にフジテレビ(東京)が7月に放送した番組を巡り、同市が「屋台行政に著しい誤解を生じさせ、信頼を失墜させた」などとして、
放送倫理・番組向上機構(BPO)に審議を申し立てていたことが分かった。BPOは審議せず、申し立てを事実上、却下したとみられる。

 BPOがこれまでに審議した26件に、自治体からの申し立てはない。フジテレビは取材と編集は適正に行ったとし
「福岡市は放送前に、暗に放送中止を求める抗議文を送ってきており、自治体によるこのような行為は表現の自由を脅かしかねないものと危惧している」と批判している。

 番組は、3月末で「名義貸し屋台」の許可が切れた店主を取り上げた「ザ・ノンフィクション〜エリナの夜明け 屋台女将(おかみ)の700日〜」。九州では放送されていない。

 市が8月に提出した申立書では、
(1)「突然突きつけられた事実上の退去命令」とのナレーションがあるが、市は退去命令を出していない
(2)店主が市職員に暴力行為をした場面は、行政にこうして訴えても仕方ないとの印象を与えた恐れがある−
などと8項目を問題として列挙。
その上で「事実と異なり、一方的で公平・公正を欠く内容が多く含まれ、暴力行為被害を受けた市職員にも精神的苦痛を与えた」などと主張した。

 市の申し立てについて、九州大法学研究院の田中孝男教授は「財産上の損害などを除き、行政活動で自治体が(個人のように)救済される権利はないと考えられる。市はホームページや記者会見で正当性を訴えるのが筋道ではないか」と指摘。
一方、立教大の砂川浩慶教授は「BPOは却下したのであれば、理由を明らかにすべきだ。自治体などが名誉毀損(きそん)を訴える場合、どう扱うかBPOに議論を求めたい」と話している。

=2017/11/11付 西日本新聞朝刊=