フィリピンの“麻薬戦争”を美化する一連のモバイルゲームの削除を要請する嘆願書に署名した。
同社のCEOティム・クック氏に宛てられた嘆願書は、
タイに本部を置くアジア薬物使用者ネットワーク(薬物使用者の健康と人権保護を推進する擁護団体)が作成し拡散した。
この嘆願書は、一連のゲームが人間や動物に対する暴力を助長するゲームを禁止する同社の方針に反すると主張しており、
ドゥテルテ大統領をモデルにしたアプリを正式に再調査し、薬物使用者への暴力を助長するアプリを削除のうえ、
このようなアプリを承認したことを謝罪するよう同社に要請している。
◆ドゥテルテ大統領の麻薬戦争
2016年6月30日の就任以来、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は麻薬撲滅運動を最優先事項に掲げてきた。
しかし、何千人もの麻薬密売容疑者が殺害され、警察の麻薬撲滅作戦(通称オプラン・トクハン)はたちまち悪名を馳せた。
警察は麻薬関連の死者を6,000人と発表しているが、複数の人権擁護団体によると、死者の数ははるかに多く、1万3,000人に上るという。
同国で相次ぐ麻薬関連の死者に国際社会が発してきた警告もむなしく。
ドゥテルテ政権は、超法規的殺人に関わった警察官の保護を宣言し刑事免責を承認したとして、さまざまな人権擁護団体から非難されている。
一部のドゥテルテ大統領の忠実な支持者が、オプラン・トクハンを下敷きにしたモバイルゲームを開発して支持を表明した。
その一連のゲームは、犯罪者や薬物使用者と戦うドゥテルテ大統領とフィリピン国家警察本部長をフィーチャーしている。
◆麻薬戦争ゲームの内容
2016年10月、件の麻薬戦争ゲーム『Fighting Crime』(犯罪と戦う)が200万ダウンロードを突破したと、グローバル・ボイス・オンラインが報じた。
タタイ・ゲームズ(Tatay Games)が開発したこのゲームで、プレイヤーはロディ(ドゥテルテ大統領の愛称)というキャラクターを操作する。
プレイヤーの目的は、さまざまな武器と特殊な力を使って犯罪者を攻撃し殺すことだ。殺される前に敵キャラクターが大統領に触れるとゲーム終了となる。
バト本部長:轢き殺せ!というゲームは、フィリピン国家警察内の警察コミュニティー・リレーションズ・グループの協力のもと、
ラニダー・ゲームズが開発した。プレイヤーはロナルド・“バト”・デラ・ロサ本部長かドゥテルテ大統領を操作して警察車両を運転し、
街をうろつく犯罪者を銃撃したり轢いたりする。
ゲームの中で敵キャラを轢く行為は、昨年、アメリカ大使館前で警察車両が抗議デモの参加者を轢いたやり口に恐ろしいほど酷似している。
レミュエル・レビ・カルディト氏が開発したゲームドゥテルテ対ゾンビは、ドゥテルテ大統領の麻薬戦争をゾンビによる世界の終末になぞらえている。
プレイヤーは“タタイ・ディゴング”(“ファザー・ドゥテルテ”の意で、大統領の支持者が使う愛称)というキャラクターを操作し、
愚かで残忍なゾンビの大群として描かれる犯罪者と戦う。
公開書簡は、これらのテーマの一部を挙げ、超法規的殺人と刑事免責を正常化した共犯だとAppleを非難したうえで、
この一連のゲームは楽しいかもしれないが危険なメッセージを広めていると指摘している。
書簡は、これらのゲームは暴力を描いた好ましくないコンテンツに関するAppleのApp Store審査ガイドラインに違反するとも主張している。
実際、ガイドラインは“人間や動物の殺傷、拷問、虐待のリアルな描写または暴力を助長するコンテンツ”を禁止している(第1章1節2項)。
ドゥテルテ大統領をモデルにしたこの一連のゲームは、Google Play Storeからもダウンロードできる。
嘆願書に署名した団体は、オーストラリア、カンボジア、フランス、インド、インドネシア、ネパール、オランダ、パキスタン、ルーマニア、
シンガポール、スリランカ、タイ、イギリス、アメリカなど30ヶ国以上の合計131の人権擁護団体、リハビリセンター、
その他の支援ネットワークだ。
殺人に対してだけでなく、反対グループによる政府に対する“紛争”活動が続けば戒厳令が敷かれるのではないかという大統領の脅威に対して抗議が起きている中で、
今回のドゥテルテ大統領をモデルにしたゲームアプリの反対運動は始まった。
オプラン・トクハンの下で行われた残虐行為に対する国民の抗議を受け、10月上旬、警察はこの麻薬撲滅作戦の終了を宣言した。
麻薬撲滅運動は現在、フィリピン薬物取締庁が率いている。
https://newsphere.jp/culture/20171112-1/