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11月14日 19時23分

「本件犯行は、摂食障害が背景にあることがうかがわれる」 今月8日、万引きの罪に問われた被告に有罪判決が言い渡されました。被告は、女子マラソンの元日本代表選手で、現役時代から摂食障害に苦しんでいました。実は、摂食障害の人が、万引きにはしるケースはほかにも相次いで報告されています。(宇都宮局記者 有馬護 ネットワーク報道部記者 吉永なつみ)

裁判で明かされた摂食障害

法廷に現れた30代の被告は、およそ10年前、国内で行われた国際女子マラソン大会で優勝し、同じ年にヨーロッパで行われた世界選手権に日本代表として出場して入賞を果たしました。

やせた体の被告は、みずからの摂食障害と万引きについて、次のように証言しました。

「実業団時代に厳しい体重制限のストレスで摂食障害になり、引退後もストレスがあると、食べては吐いていた。摂食障害になったあと、食べ物を万引きするようになった。今回は初めて、食べ物以外も盗もうと思った」

被告は、ことし7月、栃木県内のコンビニエンスストアで、化粧品や食料品を万引きした罪に問われましたが、それ以前にも平成26年と平成27年に同じ罪で略式命令を受けていました。

裁判の中で、犯行当時の心境について「つらい思いがぐるぐる回って、解消されたい、捕まって早く楽になりたいと思った」と証言しました。

裁判所は、この日の判決で「窃盗の常習性は顕著だが、犯行は単なる利欲的動機によるものとは言い切れず、酌量の余地がある。犯行後、積極的に摂食障害の治療を受け反省もしている」と指摘。懲役1年、執行猶予3年を言い渡しました。

判決のあと、被告の弁護士は「ほかにも、窃盗を繰り返す被告の弁護を担当することが多いが、ほとんどの人は摂食障害に苦しんでいた」と話しました。摂食障害の人の中には、万引きの常習者が少なくないというのです。

摂食障害の9割は女性

摂食障害は、一般的に、「やせてきれいになりたい」、「体重を落としたい」などという気持ちで始めたダイエットがエスカレートして、発症につながることが多いと言われています。

厚生労働省によりますと、摂食障害は、食料を大量に食べては吐いたり、徹底して食べなかったりする精神障害の1つで、症状が重篤になると、栄養の低下や飢餓状態に陥って命に関わる危険があります。

厚生労働省の調査では、患者数は年間およそ2万3000人と推定され、その9割は女性だということです。摂食障害に伴う異常な行動として、みずからを傷つける行為や万引きなどが挙げられるということです。

なぜ 摂食障害で万引き常習者に

ではなぜ、摂食障害の患者が万引きを繰り返す傾向にあるのか。

東京都内の心療内科クリニックの医師、高木洲一郎さんに聞きました。高木さんは医師になってまもない昭和46年からこれまでに1000人以上の摂食障害の患者を診てきました。
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