2013年
安倍首相が日本の首相として36年ぶりにミャンマーを訪問し、テイン・セイン大統領と会談した。
このこと自体は大変好ましいことであり、近年のミャンマーブームの前からミャンマー支援に関わってきた者
として感慨深いところがある。しかし、一点懸念せざるを得ない点もある。
各紙で報道されているように、今回の会談では「対日債務約2千億円の返済免除や、1千億円規模の
政府開発援助(ODA)を表明」したとのこと。

ミャンマーへの円借款の債務免除は今回の2千億円だけでなく、今年1月に約3千億円を実行したばかりなのだ
(外務省HP参照)。つまり今回の2千億と合わせて合計5千億円もの債権が放棄されたということになる。
そもそもODAの債権放棄は今回始まった話ではなく、毎年当たり前かのように繰り返されている。以下がその数字だ。(外務省HP参照)

2003年度 1088億円 (ボリビア、バングラデシュ、タンザニア等7カ国)
2004年度 1699億円 (ガーナ、ニカラグア、バングラデシュ等17カ国)
2005年度 9683億円 (イラク、ナイジェリア、ザンビア等18カ国)
2006年度 1523億円 (タンザニア、マラウィ、バングラデシュ等19カ国)
2007年度  218億円 (バングラデシュ、シエラレオネ、ネパール等9カ国)
2008年度 2860億円 (イラク、バングラデシュ等、ネパール等8カ国)
2009年度   76億円 (ブルンジ、スーダン、アンゴラ等5カ国)
2010年度  164億円 (リベリア、セーシェル)
2011年度  996億円 (コンゴ民、トーゴ)

この9年間で1兆8千億円、今年のミャンマー分を入れれば10年間で実に2兆3千億円の債権が放棄されたことになる。
円借款の財源は言うまでもなく税金だ。この借款が何のために使われ、どのような状態になっているのか、
債権放棄が如何なる理由でなされ、どのような戦略的効果が期待できるのか、失った債権の責任は誰がとるのか、
政府は十分な説明責任を果たすべきであろう。
不思議なのは、マスコミはどこも当然かのように報道し、誰も批判していないことだ。