閉店となったこの日、町歩きイベントの参加者に千駄ケ谷と村上氏との関係を説明する斎藤さん=東京都渋谷区で2017年12月3日
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作家の村上春樹氏(68)のファンが集う「聖地」として知られる東京都渋谷区の千駄ケ谷にある書店「ゆう」が3日、閉店した。店主の斎藤祐さん(72)は、ジャズ喫茶を営んでいた村上氏と同じ商店街で店を構えた仲間。ノーベル文学賞の発表時には毎年イベントを開き、村上氏を応援してきた。経営悪化のため、訪れたファンらに惜しまれながら、静かに店を閉じた。

村上氏は夫婦で1974年にジャス喫茶「ピーターキャット」を国分寺に開店。3年後に千駄ケ谷の商店街に移転した。デビュー作「風の歌を聴け」(79年)を執筆したのもこの街。同年に新人作家の登竜門・群像新人文学賞を受賞した。斎藤さんが店主を務めていた「ゆう」の前身の書店には、村上氏が夫婦で訪れ、料理本や週刊誌などを購入していたという。

斎藤さんは2年前、「ファンが集まり交流できる場所を」と、村上氏ゆかりの品を展示するスペースを店内に開設。関係者から譲り受けたピーターキャットの店名入りちょうちんや村上氏直筆のサイン、村上氏が住んだマンションのカーテンなどを飾った。このスペースで村上作品の世界を堪能する勉強会を月2回開いたり、エッセー「職業としての小説家」(2015年)でも紹介される店舗近くの鳩森八幡神社でカウントダウンイベントを企画したりして、ファン同士の交流を促してきた。

カウントダウンイベントは今後も続けていくという斎藤さん。「千駄ケ谷は春樹さんの作家としての出発点。これからも当時を知る語り部として活動していきたい」と話している。

閉店したこの日は、勉強会を共に企画した臼井良太さん(46)も大阪から駆けつけ、「ファンが交流できる場だっただけに残念。ノーベル文学賞を受賞するまで続けてほしかった」と閉店を惜しんだ。【鈴木理之】

配信12/4(月) 14:37
毎日新聞
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