https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171205-00000035-sasahi-bus_all

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発覚のきっかけは2ちゃんねる 東レ不正で面目失った“財界総理”〈週刊朝日〉

「自分のひざ元でこうした事態が発生したことは本当に重く受け止めている」

 苦渋の表情で11月29日にこう述べたのは、財界総理とも呼ばれる経団連の榊原定征会長。社長、会長を務め現在相談役の東レにおいて、子会社で製品の品質データ改ざんが発覚した。

 神戸製鋼所や三菱マテリアルでデータ改ざんが相次ぎ、経団連会長として企業倫理や法令順守の徹底を呼びかけていたさなかだった。

 不正は榊原氏が東レの社長在任中の2008年に始まっていたが、榊原氏が知ったのは11月27日という。

 実は東レは16年7月に不正を把握していた。1年4カ月にわたり公表しなかったのに、突然発表したのにはわけがある。匿名掲示板「2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)」に11月3日、「東レのタイヤコード、産業用コードを生産するグループ会社にて顧客に提出する検査データを改ざんしていた」という書き込みがあったのだ。

 書き込みを見た人から問い合わせがあり、報道機関の取材もあって、発表に追い込まれた。日覚昭広社長は28日の会見で、昨年10月に報告を受けていたが、当初は公表するつもりがなかったことを認めている。

「インターネットの掲示板で書き込みがあり、株主などから問い合わせがあった。うわさが広まる前に、正確な内容を説明すべきだと考えた」(日覚氏)

 企業不祥事やコンプライアンスに詳しい郷原信郎弁護士は、こうしたネットを通じた内部告発が広がる可能性を指摘する。

「書き込みが相次ぎ、そのたびに経営トップが謝罪会見に追い込まれる事態になりかねない。データ改ざんは多くの企業で行われていたはずで、安全性や実質的な品質に影響がなければ公表する必要はない。公表によって誤解が生じ、かえって社会に不安と混乱を引き起こす恐れがある。企業が不必要なダメージを受けないためにも、国の主導で集中アンケートなどの対策を検討すべきだ」

 日本のものづくりへの信頼をどう回復するのか、企業だけでなく国の姿勢も問われる。(本誌・多田敏男)