ZUU online 2017/12/05
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2015年1月の税制改正で相続税が強化され、課税対象者は従来のほぼ2倍になったと言われている。節税の大きなポイントの一つに、相続した親の自宅土地が税の優遇措置を受けることができるかどうかがある。

優遇を受けることができれば、最大で8割もの評価減を認められる。「小規模宅地等の特例」である。適用を受けるには、配偶者又は同居している親族であること(ただし相続人が持ち家を所有していない場合は別居親族も可)など、いくつかの条件をクリアしなければならないが、その一つに忘れてはならないものが申告書の提出だ。

相続税の非課税枠が縮小されている

相続税は、相続財産が一定の範囲内なら非課税扱いとなる。例えば兄弟3人が親から相続した場合、3000万円+600万円×3人=4800万円が非課税とされる。ちなみに、2014年以前なら5000万円+1000万円×3人=8000万円が非課税とされていた。つまり2015年の税制改正で非課税枠が4割も減らされたのである。

国税庁の統計データによると、2015年に亡くなられた方は129万人、そのうち課税対象となったのは8.0%の10.3万人だ。前年が4.4%だからほぼ倍増である。

親の自宅土地の評価減は最大8割まで

そのようななか、親の自宅土地に対しては、優遇措置が認められている。他にめぼしい相続財産が無ければ、相続税支払いのために自宅を売らなければならない。親と同居していた配偶者や親族は生活の拠点を失う。そんな事態を防止するために設けられた制度がある、前述した「小規模宅地等の特例」だ。

この制度のおかげで、自宅の敷地については、一定の条件を満たせば、330平米を限度として、8割もの評価減が認められる。例えば評価額1億円の敷地でも、優遇措置の適用を受ければ、1億円−1億円×80%=2000万円まで評価額が切り下げられる。ちなみに優遇措置は「小規模宅地等の評価減」と呼ばれる。

主な相続財産が自宅だけなら、先ほどの例でいえば非課税枠4800万円に収まる計算だ。相続税もかからない。

2015年にこの制度の適用を受けるために申告した件数は約67000件、2014年度は27000件だから2倍以上に膨れ上がっている。非課税枠の縮小に伴い、制度適用を受けようとする納税者が増えたことがわかるだろう。

申告をしないと適用を受けることができない

ここで注意してほしいのは、「税金を納めなくてよいなら、申告もせずにすむ」と考えがちだが、そうはいかない。「小規模宅地等の評価減」の適用を受けたければ、必ず税務署に申告書を提出しなければならない。

加えてこの申告書、被相続人(亡くなられた方)死亡の日の翌日から10か月以内に提出しなければならない。1日でも遅れれば、「小規模宅地等の評価減」の適用を受けることはできない。先ほどの例でいえば、1億円の評価額に対してまるまる課税され、納税額は概算で600万円に達する。

それだけではない。ペナルティーとして無申告加算税120万円(600万円×20%)、延滞税27万円(600万円×9.0%×6/12 延滞期間6か月の場合)も支払わなければならない。

小規模宅地などの他にも、住宅取得資金や教育資金を父母・祖父母から贈与を受けた場合の優遇措置、配偶者に対する税額軽減も、もちろん適用を受けたければ申告書の提出は必須だ。

国税庁の統計によると、相続税の申告書を提出したのは27.1万人、税金を納付したのが23.3万人なので、その差3.8万人が納付額0にもかかわらず優遇措置を受けるためだけに申告書を提出したことになる。

なお、煩わしい確定申告は、税理士などの専門家に頼むのが手っ取り早いが、もちろんコストがかかる。最近は税務署も納税者とのコミュニケーションを重視しており、国税庁のホームページを通じた情報提供に力を入れているため、自力申告も可能だ。ホームページ上では、相続税申告書の記載例、申告要否の判断シート、相続税の概略解説といった資料が紹介されており、PDFでプリントアウトできる。

こうした資料を頼りに申告書を作成し、わからないことがあれば、電話してみよう。国税庁は各税務署に相談窓口を設置しており、親切に説明してくれる。それでも困ったら、直接出向いて聞くこともできる(予約は必要)。

申告制度は、納税者が自ら税金の仕組みを理解し、自主的に正しく申告することをその理念としている。何も税理士に頼ることを前提としていない。申告までの猶予期間は10か月、チャレンジする意味はある。(ZUU online編集部)