受信設備を廃止した受信設備設置者との関係

承諾を命ずる判決は,過去の時点における承諾を命ずることはできないのであるから,
現時点で契約締結義務を負っていない者に対して承諾を命ずることはできない。

受信契約を締結している受信設備設置者でも,受信設備を廃止してその届出をすれば,
届出時点で受信契約は解約となり契約が終了する(放送受信規約第9条)ことと対比すると,
既に受信設備を廃止した受信設備設置者が
廃止の後の受信料支払義務を負うことはありえない。

仮に,既に受信設備を廃止した受信設備設置者に対して判決が承諾を命ずるとすれば,
受信設備の設置の時点からその廃止の時点までという
過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることになる。

これは,過去の事実を判決が創作するに等しく,到底,判決がなしうることではない。

原告が受信設備設置者に対して承諾を求める訴訟を提起しても,
口頭弁論終結の前に受信設備の廃止がなされると
判決によって承諾を命ずることはできず,
訴訟は受信設備の廃止によって無意味となるおそれがある。