通常の原発は核燃料の冷却に水を使うが、もんじゅは核燃料中のプルトニウムを増殖させるため液体ナトリウムで冷やす。ナトリウムは空気に触れれば発火し、水に触れると爆発的に化学反応を起こす。
もんじゅでは1995年にナトリウムが漏れる事故が起き、長期停止の一因になった。
 原子力機構によると、直接核燃料に触れる1次冷却系の設備は合金製の隔壁に覆われ、原子炉容器に近づけない。また、原子炉容器内は燃料の露出を防ぐため、ナトリウムが一定量以下にならないような構造になっている。
このため1次冷却系のナトリウム約760トンのうち、原子炉容器内にある数百トンは抜き取れない構造だという。

 運転を開始した94年以来、原子炉容器内のナトリウムを抜き取ったことは一度もない。
 原子力機構幹部は取材に対し「設計当時は完成を急ぐのが最優先で、廃炉のことは念頭になかった」と、原子炉容器内の液体ナトリウム抜き取りを想定していないことを認めた。
炉内のナトリウムは放射能を帯びているため、人が近づいて作業をすることは難しい。
 原子力機構は来年度にも設置する廃炉専門の部署で抜き取り方法を検討するとしているが、規制委側は「原子炉からナトリウムを抜き取る穴がなく、安全に抜き取る技術も確立していない」と懸念する。
 もんじゅに詳しい小林圭二・元京都大原子炉実験所講師は「設計レベルで欠陥があると言わざるを得ない。炉の構造を理解している職員も少なくなっていると思われ、取り扱いの難しいナトリウムの抜き取りでミスがあれば大事故に直結しかねない」と指摘する。【鈴木理之】