夕刊フジにも郵送されていた茂永容疑者の手紙(一部画像処理しています)
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富岡茂永容疑者
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 東京都江東区の富岡八幡宮で宮司の富岡長子さん(58)が殺害された事件で、弟の元宮司、茂永容疑者(56)と妻の真里子容疑者(49)の計画的な犯行の様子が分かってきた。神社から約30メートルの場所に借りたマンションで長子さんを監視し、真里子容疑者は「殺害予告」を残していた。一方、茂永容疑者が犯行直前に関係者らに郵送した手紙について、専門家は昭和初期の「津山三十人殺しを思い起こさせる」と指摘する。

 マンションの部屋は、長子さんが宮司になることを認めない神社本庁からの離脱を決めた5月29日から約3週間後の6月20日に契約。室内には日本刀やマグロ解体用の包丁、サバイバルナイフのほか、双眼鏡も残されており、長子さんの自宅への車の出入りなどを監視していたとみられる。

 真里子容疑者の名前で警察と報道関係者に宛てた12月1日付の封書もあり、「積年の恨みから殺害することにした」「自害するつもりだが、1人でできない場合は夫にそのほう助を依頼している」と書かれていた。

 茂永容疑者は7日夜、自宅に戻ってきた長子さんを襲撃、日本刀で切りつけた。遺体には首の後ろと右胸に深い傷があったほか、腕や指が切断されるなど、恨みの深さがうかがえる。

 茂永容疑者が犯行直前、神社関係者や夕刊フジなど報道機関に送った手紙は、長子さんの追放など4項目を要求、《実行されなかった時は、私は死後に於いてもこの世(富岡八幡宮)に残り、怨霊となり、私の要求に異議を唱えた責任役員とその子孫を永遠に祟り続けます》としていた。

 犯罪心理に詳しい新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(社会心理学)は「びっしりと文字が並んでいるが、他人に読んでもらいたいのなら、見出しをつけるなり工夫をするだろう。何か自らの思いが強すぎて空回りしているような印象を受ける。ただ、文章自体は非常に理路整然としており知的能力は高いと感じる」と分析する。

 一方でこうも指摘する。「『妄想性障害』といって、知性は失われず日常生活も問題なく過ごせている人が、常識ではありえない行動を取ることがある。文章からは強烈な被害者意識を感じるが、容疑者は自分が絶対的な正義であり、犠牲者に『鉄槌(てっつい)を下す』と考えていたのだろう。ある意味、津山事件に似ていると思う」

 津山事件とは1938年5月、現在の岡山県津山市で、当時21歳の男が猟銃や日本刀などを手に住民30人を殺害し、自殺した事件を指す。横溝正史の小説で、映画化もされた『八つ墓村』のモデルとされる。

 碓井氏は「津山事件でも犯人は自分が正しいと信じていた。犯行前に書いた遺書がみつかっているが、こちらも非常にきれいな文章がつづられていた」と話す。

 特徴的なのは真里子容疑者も死を覚悟したうえで、犯行に加わっていた点だ。長子さんと運転手(33)を襲った後、茂永容疑者に殺害された真里子容疑者の心境を碓井氏はこうみる。

 「通常であれば妻は犯行を止める立場のはずだが、夫のことを全て信じ切っていたのだろう。米国では過去には友人と2人で銃乱射事件を引き起こした犯人がいたが、感覚的にはそれに近い状態だったのかもしれない」

ZAKZAK 2017.12.14
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