この可哀想な子犬は、ブルドッグとテリアを交配したスタッフォードシャー・ブルテリアのメスのロカちゃん。飼い主と散歩中、突然大型犬に噛み付かれて、右の頬骨から下あごの骨にかけて複雑骨折する深手を負った。
とりわけ頭蓋骨とあご骨をつなぐ顎関節の損傷は絶望的で、町の動物病院では手の施しようがなく安楽死させるほかないと言われた飼い主が、カリフォルニア大学デイビス校の獣医学部に助けを求めた。
獣医師のほか、人間のための口腔外科医や生体医工学などさまざまな分野の専門家を集めたチームを結成し、頭蓋骨骨折のCTスキャン画像について検討を重ねた結果、犬の頭の形状にヘッドギアを作ることに決定。
ロカは成長過程にあるため、骨折部分を本来あるべき正しい位置に固定することができれば、粉々になった顎関節が再生されて、再びエサを食べたり噛んだりできるようになるかもしれないというのだ。
ロカが全身麻酔を受けて骨折手術を受けている間、生体医工学チームは学生も協力して、小さな命のための3Dプリンターを使ってマスク作りに励んだ。生体医工学とは、医学に工学技術を取り入れた比較的新しい専門分野で、ふだんは最新の検査機器や人工臓器や生命維持管理装置、手術用ロボットなどの研究開発がメインのため、動物の治療は今回が初めて。
幸い、獣医学部と研究所は400メートルほどしか離れておらず、目と鼻の先。手術が無事に終わって麻酔が切れた翌朝には、ロカが眠る病院にマスクが届けられた。3日間の入院期間中、ロカの経過は上々で、痛み止めの薬が効いて、すぐに柔らかなものを食べるようになった。
退院後は飼い主の元で安静に過ごし、おもちゃで遊んだり、硬いものを噛んだりすることは禁じられたが、水と柔らかい食べ物は問題なく与えられた。手術から1カ月後に再検査を受けるために大学病院を訪れた際、CTスキャンの結果、新たな骨が再生し始めている兆しが確認された。
獣医師は顎関節の成長を促進するために、歯応えのあるペットフードを食べても良いとお墨付きを出した。3カ月後に3度目の検診を受けたときには、手術した部分の治癒し、新しい顎関節の形成が問題なく進んでいることが裏付けられた。
顔から首にかけては、痛々しい傷跡が残っているが、そこはもともとクマや牛と戦わせるために改良された闘犬の血を引くブルテリアだけあって、大型犬に襲われても勇敢に立ち向かった証だと飼い主は誇りにしているという。
大型犬に襲われた生後4カ月のブルテリアに3Dプリンタで作ったマスクがつけられた(UC Davis Vet Med / YouTube動画より)
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3カ月後にはこんなに元気になった
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顔には傷跡が残ったが、それも飼い主にとっては勇敢な犬の証拠だという
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配信2017年12月23日 07時00分
ハザードラボ
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