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2017/12/30(土) 02:03:05.31ID:CAP_USER9https://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/12/29/20171229oog00m010063000p/9.jpg
屠蘇散に入っている生薬の数々=大阪市中央区で、花澤茂人撮影
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新年を祝う食卓に欠かせない飲み物といえば、お屠蘇(とそ)。「お屠蘇気分」など言葉はよく耳にするが、どんなものか理解し、実際に口にしている人は少数派になりつつあるようだ。由来や楽しみ方を知った上で新年を迎えたい。専門家に教えてもらった。【花澤茂人】
生薬浸したお酒
お屠蘇は、いくつかの漢方の生薬を刻んで組み合わせ、布などで包んだ「屠蘇散」を一晩ほど浸したお酒のこと。飲みやすくするため、酒の代わりに本みりんを使ったり、混ぜたりする場合もある。
大阪漢方医学振興財団の理事長で医師の中本かよさん(55)によると、使われる生薬は諸説あるが、山椒(さんしょう)、白朮(びゃくじゅつ)、防風、桔梗(ききょう)、桂皮(けいひ)、陳皮、丁子、小茴香(しょうういきょう)、浜防風などとされる。「胃腸の働きを助けるものがほとんど。寒い時期に、お酒で血行を良くし、薬効を全身に行き渡らせる狙いがあるのでしょう」。東洋医学では自身の体の内側にある力を高めることを目指すが、中でも胃腸の健康は欠かせないという。
お屠蘇のルーツは中国にあるとされる。「三国時代の医師、華佗(かだ)が処方したとも、唐時代の医師だった孫思〓(そんしばく)が作った『八神散』が基になったとも言われます」。八神散は「1人が飲めば一家ごと病が無くなり、一家で飲めば一里に病が無くなる」とされた。「伝染病が大きな課題だったころ、一人一人の健康の大切さを表現しているのでしょう。お屠蘇は今で言う予防医学の一つだった」と中本さんは解説する。日本では平安時代、嵯峨天皇に唐から「屠白(とはく)散」が献上されたのが始まりで、その後民間にも広まったという。
名前は「邪鬼を屠(ほふ)り(やっつけ)、魂を蘇(よみがえ)らせる」、または「蘇」という鬼を屠るという意味から。多くの地方で年少者から順番に飲むという慣習があり、毒味をした「薬童子」の名残という説や、若者の精気を年長者に渡すためという説がある。
中本さんは「一口飲んだからといって元気になるわけではないが、古くからの習わしに触れることで健康を再確認する機会にしてほしい」と話す。ただ、お酒であることには変わりない。飲み過ぎには注意だ。
屠蘇散は、薬局などで入手できる。
普段使いの器でも
いざ準備。せっかくなら、すてきな器でいただきたい。しかしわざわざ高価な「屠蘇器セット」を買い求めるのも大変だ。
「すべてそろえようと難しく考える必要はなく、気軽に楽しむ気持ちが大切です」。大阪・曽根崎でおよそ半世紀前から工芸店「ようび」(大阪市北区)を営む真木啓子さん(79)はそう話す。
お屠蘇をいただくために最低限必要なのは、注ぎ口と持ち手の付いた酒器「お銚子(ちょうし)」と、平たい形の「引盃(ひきさかずき)」だ。「かつてのお酒は今のような澄んだ清酒ではなく、どろっとした濁り酒。盃は平たい方が飲みやすかった」と真木さん。お銚子が手に入らなければ、お茶用の急須で代用することも可能だという。正月らしいお飾りを付けると気持ちがいっそう高まる。
さらに、盃を載せる「盃台」や、道具一式を載せるお盆もあれば本格的だ。「台はお酒を神様にささげた名残。手に入らない場合は、盃の下に懐紙を敷くだけでもきれいに見えます」。お盆は家にあるものでもOK。汚れが気になったら、内側のサイズにぴったりと合わせて白い紙を切って敷けば清潔感が出る。「普段の道具でも、ちょっとした工夫でお正月らしい楽しみ方ができます」
すてきな器を購入したら、日常的に使ってみよう。「お正月にしか使わないのはもったいない。ひな祭りなどの行事や、お客様が来た時などにも、積極的にその取り合わせでお酒を楽しんでほしい」と真木さんはほほ笑む。
毎日新聞 2017年12月29日 大阪朝刊
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