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こうした未婚男女の結婚観は、荒川さんたちが2016年に実施した20〜50代の男女1万人への調査でも同じ傾向でした。平均初婚年齢の30代で見ると、男性の5割、女性の4割は結婚に対して後ろ向き――。「『結婚するかもしれないと思いつつも、今のところはない』という意識が大半なのに、調査の一部を切り取って『9割の人に結婚願望があるのに、未婚のままでいるのはおかしい』という論調が作られ、婚活が推進される。それが独身者の生きづらさにつながっています」。

■「ソロで生きる力」が必要

 そもそも2035年には、独身者が人口の48%を占めると推計され(社人研「日本の世帯数の将来推計(2013年1月推計)」)、「ひとり」がマジョリティーになる日も遠くありません。さらに独身の中には未婚だけでなく、結婚後の離婚や配偶者の死別による「独身化」が増えています。

 「人口の半分が独身になる時代に、結婚か未婚かという二項対立的な議論は時間の無駄でしかない。むしろ、結婚後にも離婚やパートナーとの死別などがあることを考えると、既婚や未婚に関わらず、一人でも生き抜いていけるような精神的自立を誰もがすることが必要なんです」

 こうしてたどり着いたのが、「ソロで生きる力」でした。

■ソロで生きる力とは「つながる」こと

 荒川さんが強調するのは、「人とつながることこそがソロで生きる力」だということです。

 「矛盾するように聞こえるかもしれませんが、『周りとうまくやれないから』『コミュニケーションが取れないから』と、他者との関わりを避ける人は、ソロで生きる力があるとは言えません。逆説的ですが、一人で生きるということは、周りとつながっていることなんです」

 「そのためには『自分の中の多様性』を持つことが大切です。『自分のアイデンティティーはこれだけだ』と頑固に守っている人ほど他人とはつながれません。そういう人は孤立や依存を深めてしまいがちです」

 多様性を持つためには、「色々な人と話をすることから」とアドバイスします。「話をするだけでも、相手への共感や違和感など様々な感情が生まれ、新たな自分を生みだすことができます。外部の人と知り合うきっかけがない人や直接会うのが苦手な人でも、今はオンラインサロンなどネットの入り口がいくらでもあります」。

■選択肢があれば、決めるのは自由

 自分の中の多様性を広げれば、そこが社会との接点となり、また新たなつながりが生まれます。「そのつながりは異性でも同性でも、年代を超えていても構いません」。そうしたつながり増えれば、人生の選択肢も増えます。

 「ソロで生きる力があれば、結婚するか未婚でいるかも選択肢の一つにしかすぎません。それを決めるのは本人の自由です。選択肢があれば、『こっちがダメでもあっちにすればいい』と思うことができる。そうすれば、独身の人が感じているかもしれない生きづらさも少しずつなくなっていくと思います」