>>1

赤信号で止まった14カ所は、前の車がすでに停車していたか、交差点の相当手前で信号が赤に変わっていてすでに歩行者が道路を横断するなどしていた。こうした状況から、検察側は「(男は)赤信号に変わった直後であれば、事故を起こさずに交差点を通過できると考えていた」とした上で、「現場も一気に通過できると思い込んだ」と指摘した。

■「ボーッとしていた」

 検察側の指摘に対し、男は被告人質問で、事故について「ボーッと考え事をしてしまっていたのか、(信号を)見落としてしまった。事故を起こすまで全く信号を見ていなかった」と繰り返し、故意による信号無視を否認し続けた。

 現場以外の赤信号通過についても「全て見落としていたかもしれないし、黄色だと思って通過した場所もあるかもしれない」と、いずれも故意ではないとした。

 ドライブレコーダーの映像は男の“危険運転ぶり”を裏付けているようだったが、弁護側は逆に、男が現場の信号を認識していなかった証拠になると訴えた。

 なぜか。

 現場に到着するまでの映像では、男は交差点の相当手前で赤信号になった場合は止まっていた。この点をとらえて弁護側は、男について、止まるべき場合は止まる人物と分析。現場の信号が赤になってから事故が起きるまでは6秒間もあったため、「現場に到着するまでの運転状況を踏まえると、赤信号を認識していれば止まるべき状況」と述べ、男には信号の見落としなどの止まれなかった事情があったことを訴えた。そして「『一気に通過しようとした』との検察側の主張は不自然だ」と反論した。

 「赤」認識の可能性は高いが…

 12月15日の判決公判。西野吾一裁判長は、検察側が予備的訴因として追加していた過失致死罪を適用し、男に禁錮2年6月を言い渡した。検察側は危険運転致死罪の場合は懲役8年を求刑(過失致死罪の場合は禁錮3年6月)しており、求めた結果からはほど遠い判決となった。

 西野裁判長は判決理由で、弁護側の主張通り「現場にたどり着くまでの走行状況を踏まえると、『一気に通過しようとした』との主張は唐突で不自然」と指摘。「(男が)赤信号を認識していた可能性は高いが、それが間違いないとまでは判断できない」として、「故意だった」との検察側の訴えを退けて「過失」と認定した。

 ただ、西野裁判長は「信号の見落としは、車線変更など危険で必要性の乏しい運転が原因。過失は相当大きい」と指弾した。

 ■一人で育てた母の涙

 命を奪われた女子生徒はまだ高校1年。母親が女手一つで育て、女子生徒は高校に入学してから母親に「子供優先で育ててくれてありがとう。高校生になったし、ママのやりたいことをやってください」と手紙を送っていた。

 法廷で意見陳述した母親は「娘は何度も何度も『悲しませてごめんね』と言っていると思う」と涙。娘は中学の卒業文集で「辛いときこそ笑顔。笑っていると幸せがくる」とつづっていたといい、「娘が残してくれた言葉を支えに生きていきたいが、負の感情が芽生えてしまう。私は人をうらやんだり、憎んだりして生きているのか(と自問自答している)。心から笑っていたい」と述べた。

終わり