不動産大手「野村不動産」(東京都)で、調査や企画を担う労働者が対象の「企画業務型裁量労働制」を社員に違法に適用していたとして、各地の労働基準監督署が東京本社や関西支社など全国4拠点に是正勧告をした。

報道によると、マンションの個人向け営業などの業務に就く社員の大半に裁量労働制を適用。裁量労働制は適用できなくなったため、違法残業や残業代未払いが発生することになった。

こうした営業職への裁量労働制の適用については、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも相談が寄せられている。訪問販売の営業をしているという男性は「朝の出勤時間は決められ、遅刻したら減額。会社からは裁量労働制だからどれだけ働いても残業代出ないと言われた」という。

●「働かせ放題」になる懸念

今回野村不動産で違法に適用されていた「企画業務型裁量労働制」は、本社などの中枢部門における企画、立案、調査及び分析の業務を行う労働者を対象としたものだ。これは業務の性質上、業務の遂行方法や時間の配分などに関し、具体的な指示をしないこととするもので、労働者の裁量に委ねる必要があるからこそ認められている例外的な制度である。

今回のケースについて労働問題に詳しい波多野進弁護士は、「裁量労働制の不正な適用は、残業代の不払いの手段として使われる危険が常にある」と警鐘を鳴らす。

「ここで使用者が求めている効果は、実際の労働時間と関係なく、決議で定めた時間を労働したものとみなし、実際の労働時間に対する賃金を支払わないことです。使用者が働かせ放題にしてしまうのです」

裁量労働制には、今回問題となった「企画業務型」の他に、もう一つ「専門業務型」というものがある。この専門業務型裁量労働制が導入できるのは19業務に限られており、さらにその中でも厚生労働省が適用対象者の範囲を厳しく区分している。

●裁量のない「裁量労働制」にも注意を

「企画業務型」「専門業務型」どちらの裁量労働制であっても、一般的な営業職は対象業務外だ。今回の野村不動産でははそもそも対象業務外の営業職に適用されていたわけだが、裁量労働制が適用されている労働者が気をつけるべきポイントはなんだろうか。

「たとえ裁量労働制が導入されていたとしても、常に長時間の残業をしなければ仕事が終わらないなど、裁量がない勤務に就いているなら、その裁量労働制は無効になる可能性が高いといえます。

日々の勤務時間をきっちり証拠に残しておき、実際に働いた分の賃金を請求できるよう準備をしておくといいと思います」

政府は今後、労働基準法の改正を通じて、一定の専門知識を持った「法人向け提案営業職」を企画業務型裁量労働の対象に含めることを目指している。一般の営業職が対象外であることに変わりはないが、違法行為が起きないかどうか、注意する必要がありそうだ。

配信2018年01月11日 09時43分
弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/c_5/n_7245/

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