ロヒンギャの密航問題などが議題となったアンダマン海沿岸6県の治安対策会議=タイ南部ラノーンのホテルで2018年1月10日、西脇真一撮影
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建設資材を運ぶ貨物船のミャンマー人船員。向こう側はミャンマーだ=タイ南部ラノーンの港で2018年1月10日、西脇真一撮影
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 タイ政府が、ミャンマーの少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」を乗せた密航船の接近に対し警戒を強めている。昨年8月にロヒンギャの武装勢力と治安部隊の衝突が発生して以降、初めて海が穏やかになる乾期を迎えたためだ。タイなど沿岸国は、2015年に漂流するロヒンギャ密航船の接岸拒否を巡り、国際社会から批判されたこともあり、警戒監視に余念がない。【ラノーン(タイ南部)で西脇真一】

 10日、ミャンマー国境に接するタイ南部ラノーンのホテルで、ラノーンやプーケット、クラビなどアンダマン海沿岸6県の関係機関による治安対策会議が開かれた。議題の一つがロヒンギャ問題だ。

 地元海軍のジェラーンポン・クムラシー副司令官は「密航船は波に弱い。海が穏やかになり、やってくる可能性はある」と指摘する。年間を通して警戒するが、特に5月までの乾期が要注意だという。

 副司令官は「彼らの目的地はタイではなく(イスラム教徒が多数派の)マレーシアやインドネシアだ」とし、船が来たら「水や食料を供給し、エンジンが故障していれば修理を支援する」。タイ国家安全保障会議のワンロップ・ラクサノック事務局長も「彼らはタイを通過国とみている。人道援助し、目的地に向かえるようにする」と話した。基本的に、ロヒンギャがタイに上陸するのを阻止し、代わりに「支援策」を強める方針という。

 ラノーンの街にはミャンマー語の広告看板が掲げられ、漁船や鮮魚市場で働くミャンマー人も多い。だがロヒンギャを名乗る人や密航船を見たという人には会えなかった。

 15年5月、さらに南方のタイ・マレーシア国境でロヒンギャの密航者が埋葬されたとみられる集団墓地が多数見つかり、問題化した。この時、タイ政府は、密航を手引きしマレーシアへ送り出す人身売買組織の摘発を強化した。同じ頃、密航船が海上を漂流する事態が多発。沿岸各国は追い返す動きを見せ、国際機関や人権団体から保護するよう批判された。

 地元入国管理当局の幹部によると、15年ごろから40人以上のロヒンギャが難民として米国に渡った。今も11人が認定を待っているという。

毎日新聞 2018年1月14日 17時59分(最終更新 1月14日 18時13分)
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