米アップルは17日、海外利益の本国還流に伴う納税額が380億ドル(約4兆2290億円)になると発表した。先月成立した税制改革法によって海外資金の還流を促す「レパトリ減税」が実施されるのを受けた。
今回の納税額は、法人税率引き下げを含む税制改革法の成立に伴うものとしては最大。アップルが海外で滞留させている資金はおよそ2500億ドルだが、そのうちどの程度還流されるのは明らかになっていない。
アップルはさらに、新たなキャンパス(オフィス施設)の建設と新たに2万人を雇用する計画を発表。今後5年間で米経済に3500億ドルを上回る貢献をすると表明した。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は、「雇用増に直接的な影響がある分野に、我々の投資の焦点を置く」と述べた。
アップルは現在、米国内で8万4000人を雇用しており、国内の納入業者や製造会社への支払額は今年、550億ドルに上る見通し。
アップルは合計7州にデータセンターを置いており、17日にはネバダ州リノにある施設の拡張工事が着工した。同社は300億ドルに上る設備投資計画の一環として、5年間でデータセンターに100億ドル以上を投資する。
顧客向け技術サポートの人員を収容する予定の新キャンパスについては、建設地を今年中に発表するという。これに先立ち同社は、2018年の設備投資額が前年の150億ドルから160億ドルに増える見通しだと明らかにしていた。
税制変更
税制改革法の成立を受け、米国内での投資計画を発表する企業が相次いでいる。
法人税率は35%から21%に引き下げられ、海外で上がった利益を本国に還流させる際には、優遇税制が1回限りで適用される。
ドナルド・トランプ米大統領は、減税が米国の競争力を向上させ、米国企業の国内投資を促進すると主張している。
税制改革を主導した共和党のポール・ライアン下院議長は、ツイッターでアップルの発表を歓迎。「米経済、そして米国の労働者にとって素晴らしいニュースだ」と書いた。
税制改革に反対する人々は、企業は減税で得た資金の大半を自社株取得や配当の増額にあてるだろうと述べている。
CFRAリサーチのアナリスト、アンジェロ・ジノ氏は17日、今後1年から1年半でアップルが自社株を最大1割買い入れる可能性があるとの見通しを示した。
アップルはすでに、2019年3月までに3000億ドルの株主還元を行う計画の一環として、1660億ドルに上る自社株買いを実施している。
大手テクノロジー企業に対しては、市場での独占的な立場を利用し自社の利益を促進しているとして競争当局から厳しい視線が向けられているほか、依存性の高い端末利用を抑制する方策を求める声が出ている。
さらにアップルは、基本ソフト(OS)の更新で古い端末の動作速度を意図的に落とした対応をめぐり、訴訟に直面している。
アップルの昨年度(9月30日まで)の業績は、売上高が2300億ドル近くに上り、利益は480億ドル超となった。
(英語記事 Apple to pay $38bn on foreign cash pile)
2018/01/18