そこで今回のテーマ“事故修復歴ありのクルマを買うメリットとデメリット”となるのだが、はっきりいってメリットよりはデメリットのほうがかなり大きいといわざるをえないだろう。

「事故車だから安くなるのでは?」と価格面でのメリットを指摘するひともいるかもしれないが、価格面でそこまで魅力的に安くなっている場合には、それなりのダメージの大きい事故を受けて修復しているものと考えてもらいたい。

社団法人・日本自動車査定協会のホームページによると、「修復歴とは車両の骨格の部分、つまりフレームやシャシーなどクルマの強度を保つ部分に影響を及ぼし、交換や修正をした経緯のあるもの」となっている。
それでは実際の部位については、ラジエータコアサポート、クロスメンバー、サイドメンバー、インサイドパネル、ダッシュパネル、ピラー、ルーフ、センターフロアパネル、フロアサイドメンバー、リヤフロアとなる。

たとえば大きな雹が降ってきて天井がボコボコになったので、ルーフ(天井)をまるごと交換すると、“修復歴あり”となるのだ。

またフレーム修正まで必要なダメージを受けたとして、フレーム修正をしたとしても、ダメージを受ける前のなんでもなかった状態にまでは回復することは難しい。
もちろん、ダメージのレベルや、どこまでコストをかけて修復を進めていくかによって異なっていくケースも否定できないが、
まっすぐ走らなくなる(ステアリングをとられる)といった後遺症に見舞われるのが一般的となっている。

事故修復歴のあるクルマはどんな修復をしているのか必ず説明を聞くだけでなく、可能ならば当該車両を試乗(構内でのチョイ乗り程度でも)して自分の身体でコンディションを確認することをおすすめする。

自動車販売業界に詳しいひとによると、「あるディーラーに持ち込まれた事故車両について、メカニックによりフレーム修正が必要と判断されたことがあったそうです。
するとオーナーが車両保険を使って修理するというので、修理見積をオーナーが加入している保険会社に送ると、
『フレーム修正までする必要はありません。見た目だけ原状回復してください』と指示がきたそうです」。
修理を任されたディーラーでは必要と判断したが、実際はフレーム修正を行っていないので、修復歴車扱いにならないことになる。
もちろんその保険会社なりの判断でそこまで修理(フレーム修正)する必要はないと判断した事象なのだろうが……。

また、「あるクルマを中古車として購入したら、しばらくしてエンジンが落下したというケースもありました。
深刻なダメージを受ける事故を起こしていたのですが、その修理が十分ではなかったようなのです。
しかもその状況を中古車として再販するまで結果として見落としていたのです」とのこと。

意図的に隠すつもりがなくても、下取り査定やその後の再査定でも修復内容が不十分だったりすることを見落としてしまうことも稀にだがあるのは確かなようだ。

そのようなこともあるので、事故修復歴車だから安くて良いのでは?などという前に、中古車選びは自分が納得できるまで確認しないと、思わぬ落とし穴も多く潜んでいるのである。
試乗は現実的には難しいケースが多いかもしれないが、とりあえず申し出てみること。
さらに内外装の入念なチェック、そしてエンジンを始動し振動やエンジン音などを聞いてコンディションを確認すること。

中古車は古物扱いとなり、たとえ同年式同型車であっても、走行距離などをはじめコンディションは新車と異なり原則均一ではない。
そしてどこまでコンディションの良し悪しをチェックするかは購入者の自己判断に任されているので、くれぐれも面倒くさがらずに入念にチェックしてもらいたい。