※続きです

食品業界の商慣習である「3分の1ルール」(賞味期限を3で割り、最初の3分の1を納品期限、次の3分の1を販売期限とするもの。
参照:「卵は常温で2ヵ月保つ!大量の食品廃棄を生む賞味期限のウソ」)についても、ロス削減に向けて緩和したと公式サイトにあります。

「3分の1ルール」のうち、菓子・飲料に関しては、平成26年度にはイトーヨーカ堂、東急ストア、ユニー、セブン-イレブン・ジャパン、サークルKサンクスで、平成27年度にはファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキ、スリーエフ、イオンリテール、ポプラでも緩和されています(出典:農林水産省食料産業局発表資料)。
ローソンに連絡した際、広報の方が「セミオート発注システム」について教えてくださいました。

需要と供給の差(=廃棄ロス)を少なくする取り組みで、2015年秋に導入したそうです。
このシステムでは、各店舗の直近の販売実績、曜日、天候、気温、競合環境、カード会員の購買データなど、約100項目の条件をベースに、どれくらい売れるかという販売予測を立て、店舗が発注するとよいと考えられる商品数を自動算出し、推奨しています。

この推奨値を元に、最終的には店舗オーナーが決めているとのこと。
廃棄ロスだけではなく、商品を売り逃してしまうロス=機会ロス・販売チャンスロスも最小限にとどめることを目的としています。
このようにコンビニ各社は、食品廃棄物の削減には前向きに取り組んでいます。それではなぜ毎年、恵方巻の大量廃棄が取り沙汰されるのでしょうか。

■スーパーよりもコンビニの方がロスを減らしづらい

今回、複数の食品小売企業の15名に“個人的見解”を伺うことができました。
まず、恵方巻については、スーパーとコンビニと「調理の面での差」があります。
スーパーの場合、店舗内での調理が可能です。今回伺った企業では、「店で巻いて作り値引きして売りつくす」、「恵方巻の消費期限を8時間延長」、「閉店前の段階で残数を数え担当者へ連絡してロスをなくした」、「消化率の悪い店から消化率の良い店へと振り替えした」等の答えが返ってきました。

かたやコンビニの場合、唐揚げなどの一部商品では店内調理はあるものの、恵方巻は店内で巻いているわけではありません。
したがって、スーパーのように、販売在庫や客の入りを見ながらの製造調整は難しく、また基本的に店舗の裁量で値下げができないため、恵方巻に関しては「コンビニの方がロスを減らしづらいのでは」とのことでした。

ついでに、スーパーの方々に、「なぜ食品廃棄がなくならないのか」と伺ったところ、「品切れ=罪悪・容認されない・恐怖・販売チャンスロス」、「過剰在庫にどれだけ余分なコストがかかっているのか社員が把握していない」、「ある程度のボリュームがないと売り場が映えない」等が挙げられました。
ちなみに、品切れなどの機会損失については、むしろスーパーよりコンビニの方がより厳格でシビアなのが、流通業界の“常識”ということです。
ということは、コンビニでも「食品廃棄の根絶は難しい」と、容易に想像できます。

では、どうしたらいいのでしょうか。
重ねて伺ったところ、「法律でペナルティを課す」、「アウトレットで消費期限間近のものを販売する」といった意見のほか、消費者(顧客)側に対しても「賞味期限や消費期限についてきちんと理解し、食べられるのに些細な理由で嫌悪することを控えてほしい」といった要望がありました。

■個人の気持ちとしては「もったいない」

私は踏み込んで、「仕事上で食べ物を捨てたときに抱いた感情」についても聞いてみました。
「後ろ向きの作業で無駄」「疲れる」「苦痛」「もったいない」「自分の力量にがっくり」「世の中おかしい」「貧困国の子どもの顔が浮かんで申し訳ない」「産まれてきた牛に申し訳ない」等、残念さや罪悪感をあらわす“素のままの気持ち”が伝わってきました。

フランスの法律が成立してから「日本でも同様の法律を」という声を聴きます。それも一案でしょう。
ただ、余ったものを捨てずに寄付する以前に、「作り過ぎない」「売り過ぎない」「買い過ぎない」といった、「適度な製造・販売・消費」が求められていると思います。

それは2015年秋の国連サミットで決められた「持続可能な開発目標」(SDGs、Sustainable Development Goals)の17のゴールのうち、12番目でも謳われています。
もう大量生産・大量消費の時代ではないでしょう。先進国として、環境配慮しながらのビジネスが必須と考えます。

※続きます