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 2004年に立ち上がった同NPOが、これまでに救った609人(1月22日現在)のうち、未成年者は22人。その中には自転車で来た県内の高校生も含まれている。

 スタッフは、とにかく声を掛け、嫌がって逃げる人でも捕まえて、事務所に連れて行く。すると、ぽつりぽつりと話し始めるという。
「飛び込む寸前になっても、本当に死にたいと思っている人はいない」。茂さんがたどりついた結論だ。断崖に立ってなお、救いを待っていた。

 警察庁によると、16年の自殺者数は2万1897人で7年連続の減少。しかし5歳ごとに区切った年齢階級別でみると、15歳から39歳までの5階級で、死因の1位だった。自殺対策白書は「若い世代の自殺は深刻」と指摘する。

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 「私はいつもおびえている。早く楽になりたい」。ある女子中学生の遺書は「くたばれ!」の文字で締めくくられている。
保護されたある高校2年の女子生徒は「この世から消えたい。家にも学校にも私の居場所はない」と泣き叫んだ。

 茂さんは「未成年者の自殺の動機は周囲に対する抗議に尽きる」と話す。そして「たった一人でいい。家族でも友達でも先生でもいい。たった一人、味方がいれば自殺をすることはない」と断言する。

 昨年、アパートで9人の遺体が見つかった神奈川県座間市の事件。容疑者は自殺願望がある女性たちに「一緒に死のう」と誘った。茂さんは「女性には容疑者がたった一人の味方に見えたんだろう」と話す。

 行き場をなくし、吸い込まれるように東尋坊にやって来る若者たち。しかし、こんな言葉で、救われる命もあるという。

 「おーい、めし食ったか」