土田浩翔さんの指導を受けながらマージャンを楽しむ参加者
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かつてはギャンブルのイメージが強かったマージャンが、大きく様変わりしている。約35年前に始まった「賭けない・飲まない・吸わない」をキャッチフレーズにした「健康マージャン」が全国的な広がりを見せ、中高年の女性を中心に参加者が増えている。最近では、大阪市内の一流ホテルを会場に教室が開催されるまでになった。高齢者のスポーツと文化の祭典「ねんりんピック」の正式種目にも採用され、「指を動かしながら頭を使うので、脳の活性化にもなり、認知症予防にも最適」との声もあがっている。(上岡由美)

■マナーに厳しく…コミュニティーの場に

 「ツモ!」「やられたわ。私もテンパイ(残り1牌(はい)でアガリ)だったのに…」

 平日の午後、大阪市中央区のマージャン店「天満橋会館」で、女性たちの華やいだ声が響いていた。

 同店ではほぼ連日、一切お金を賭けない「健康マージャン教室」が行われている。ゲーム中は飲酒も喫煙も禁止。ゲームが始まる際には「お願いします」と声をかけ合い、終われば「ありがとうございました」とあいさつする。服装などにも気をつかうなどマナーにも厳しい。

 会員数は2千人を超えており、数年前から女性の会員が増加。女性の参加者が約7割を占める日もあるという。

 大阪府東大阪市から参加したという女性(65)は、昨年12月から教室に通いはじめた。「前から通いたかったけど、会社を退職したのを機にやっと念願がかないました」と笑顔で語る。最初は「東南西北(トン・ナン・シャー・ペー)」など牌の呼び方もわからなかったが、おぼつかない手付きながらも「楽しく過ごしています」と話す。

 切る牌の選択に悩んでいても、対局者が「ゆっくりでいいよ」と声をかけてくれる。昼休みには会員同士で弁当を食べたり、ゲームが終われば一緒に喫茶店に行くこともあるという。

 「マージャンを覚えることも大切ですが、まずは楽しく遊んでもらおうと心がけています。堅苦しく考えても、長く続きませんから。95歳の女性会員も週2回ぐらい来ていますよ」と同店の奥脇敏郎社長(50)は説明する。

■実は「知的なゲーム」イメージ変えたい

 リーガロイヤルホテル(大阪市北区)では昨年4月から、毎月第2金曜日に「こころをそだてるプレミアム健康麻雀(マージャン)教室」を同ホテル内で開催しており、50〜70歳代の女性参加者らでにぎわっている。

 指導に当たっているのは、「最高位戦日本プロ麻雀協会」特別顧問を務める土田浩翔(こうしょう)さん(58)。七対子(チートイツ)=2枚ずつ7組の牌を集める手役=を得意とし、「土田システム」と呼ばれる独自のシステムに基づいた打ち筋は、多くのマージャンファンを心酔させている大物プロ雀士(じゃんし)だ。

 ホテルニューオータニ東京(東京都千代田区)でも教室を開いているという土田さんは「これまでのマージャンのイメージを変えるには、ホテルでマージャンをするという意外性もあります。わくわく感や反射神経が磨かれるので間違いなく認知症予防にも効果があると思います」と明かす。

 教室が開設されたのは、大阪市住吉区の大学教授秘書、上谷衣代(うえたにきぬよ)さん(58)が、同ホテルの文化教室「エコールドロイヤル」担当者に相談したのがきっかけ。もともと上谷さんはマージャンに興味がなかったが、平成27年秋に友達に誘われて東京の教室に参加したところ「マージャンって知的なゲーム」と認識を改めたという。土田さんの承諾を得て交渉を重ねた結果、ホテルの一室を借りる形での開講が認められた。

 まずは、土田さんが「マージャンは勝っても負けても、相手にまた一緒に打ちたいと思ってもらえるような、愛される人になるのが目標」などと心構えを伝授した後に、上級から初心者に分かれて実戦が開始。教室の最後には、濡れたふきんと乾いたふきんで牌をきれいに拭いて、箱に戻すことまで行っている。

■競技マージャンでは女流プロに注目

 健康マージャンは昭和58年、東京大卒のプロ雀士、井出洋介さん(62)らがマージャンに対するイメージを変えようと、「日本健康麻将(マージャン)協会」を設立して普及活動に乗り出したことから始まる。

2018.2.13 11:00
産経WEST
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