東日本大震災で甚大な被害が生じた岩手、宮城、福島の被災3県の18年度当初予算案が出そろった。復興関連事業への配分は岩手が前年度比6・4%減の2849億円、宮城が24・1%減の2894億円、福島が29・4%減の6178億円といずれも減少したが、3県を合わせて約1兆2000億円を確保した。福島県では福島第1原発事故に伴う除染作業が進んだことから2600億円近く減少した。新年度は「復興・創生期間」の折り返しの3年目となり、被災地ではハードの復旧・復興は終盤に差し掛かる。
被災3県の復興関連経費(福島は原発事故対応分含む)は、道路、河川、港湾・海岸などの復旧工事や災害公営住宅の建設が進んだことで前年度を大きく下回り、一般会計の総額は3県とも縮小した。特に福島県は15・8%減と前年度に続き2桁減となった。

岩手県では「第3期復興実施計画」に基づく東日本大震災からの復興と、16年夏に東北に上陸した台風10号災害からの復旧・復興事業に最優先で取り組むとともに、「ふるさと振興」を着実に推進する予算として編成した。
一般会計は前年度当初比2・7%減の9533億48百万円と2連連続で1兆円を下回った。このうち震災復興関連予算は6・4%減の2849億7百万円と震災後初めて3000億円を割り、3年連続で前年度を下回った。道路や災害公営住宅などの整備が進んだことで前年度より194億円減少した。13年度のピーク時は、がれき処理を含めて5161億円を配分しており、4割程度減少したことになる。

復興事業を除いた通常予算は1・0%減の6684億41百万円とわずかに減少している。震災後の予算規模は6500億円前後で推移している。
通常分と震災分を合わせた投資的経費の総額は2725億10百万円(3・5%減)。このうち普通建設事業費は2068億48百万円(2・0%減)で、震災分は1226億54百万円(8・0%減)、通常分は841億94百万円(8・2%増)を確保した。

宮城県は震災の復旧・復興に最優先で取り組むとともに、交流人口の拡大や福祉の充実など県政課題を解決するための施策に重点配分した。一般会計は8・5%減の1兆1206億10百万円で、6年連続で前年度を下回り、震災後で最小の規模となった。震災対応分は24・1%減の2893億54百万円。震災復興計画に掲げた主要政策に必要な額を確保した。
土地改良や道路、橋梁など基盤整備のほか、被災した県立高校や合同庁舎などの災害復旧事業が大幅に減少し、前年度に比べ920億円減った。

投資的経費は3059億12百万円(18・3%減)と大幅減となったが、震災前に編成した11年度当初予算の1001億円に比べると3倍を超えており、依然として高水準の予算額を計上している。内訳は補助が2378億49百万円(17・7%減)、単独が439億54百万円(19・8%減)、国直轄241億9百万円(22・0%減)。
福島県は「さらに挑戦を続け、福島の未来を切り開くための予算」として編成した。重点事業に避難地域などの復興加速化や農林水産業再生、新産業創造、復興まちづくり・交流ネットワーク基盤強化など11のプロジェクトを打ち出している。

一般会計は1兆4472億12百万円。前年度当初比で15・8%減と3年連続で前年度を下回ったが、被災3県では最大規模。震災復興と原子力災害の対応には6178億25百万円(前年度当初比29・4%減)を充当しており、岩手、宮城両県の2倍以上を確保している。投資的経費は2909億69百万円(22・9%減)で前年度より867億円減少した。
震災などの対応は、住宅や公共施設などの除染作業が終了し、復興公営住宅の整備も進んだことから大幅減となるが、除染事業は中間貯蔵施設への輸送費や除染対策基金の積み立てとして1640億円を計上した。復興公営住宅の整備には52億円を充て、123戸の建設を進める。

2018年2月13日
日刊建設工業新聞
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