九州各県がイチゴのブランド品種開発や流通拡大に力を入れている。ブランドイチゴの火付け役となった福岡県の「あまおう」に追いつけ追い越せと奮闘している。【青木絵美】

 あまおうは今季で2003年秋の本格販売開始から15周年を迎える。「まさに救世主。40年農業を続けてきたが、農家経営をプラスに変えるブランドの力を初めて感じた品種だ」。約15アールのビニールハウスであまおうを育てる福岡県古賀市の農家、高原茂さん(61)は真っ赤に大きく実ったイチゴの手入れをしながら笑顔を見せた。

 県によると、都道府県別のイチゴの栽培面積や販売量は栃木県が最多だが、1キロあたりの販売単価は、福岡県が昨季1356円と、04年以来13年連続でトップを走る。あまおうの栽培を県内に限定したうえで、クリスマスやひな祭りなど、需要の高まる時期に安定して出荷できるよう栽培技術を確立するなどし、販売単価は当初に比べ2割ほど上昇した。

 九州各県も独自品種の開発と販路拡大に余念がない。佐賀県が開発して県外栽培を認めてきた「さがほのか」を作ってきた大分県は昨年12月、8年がかりで育成した念願のオリジナル品種「ベリーツ」を披露。高い糖度と鮮やかな色が特徴で、県の担当者は「色、形、味とも良く、イチゴ群雄割拠の時代に勝ち残れる品種」と胸を張る。今季は1ヘクタールで生産して農家向けの研修を重ね、来季以降、関西を中心に販売エリア拡大を目指す。

 熊本県は15年から、色つやの良さを名前に込めた「ゆうべに」を生産し、今季の栽培面積は昨季比約1・6倍と順調に伸びている。宮崎県は、病害に強く農家の作りやすさを意識した「こいはるか」を今季から観光農園で栽培。県の担当者は、農家や消費者の反応も見ながら「あまおうなど他のイチゴにない特徴を持たせたい」と意気込む。鹿児島県は今年12月から販売予定の新品種の愛称を公募し、期待を高める。

 中村学園大の甲斐諭学長(食品流通学)は「農家の高齢化や後継者不足に直面する中で単価の高いイチゴは魅力」と指摘。「農産物は永遠のブランド化が難しく、他県の品種との差別化も難しい。そうした中、あまおうは、県内に限った栽培で値崩れを起こさせない仕組みを作るなど一つのモデルになった」と話した。

■九州各県のイチゴ新品種開発の状況

<福岡>「あまおう」の平均販売単価が13年連続全国一

<佐賀>現在の主力「さがほのか」に続く新品種のブランド化を目指して試験栽培

<長崎>愛知県が育成した「ゆめのか」を主力にしつつ、10年後をめどに独自品種の育成に着手

<大分>初の県独自「ベリーツ」を今季から本格出荷

<熊本>「ゆうべに」の今季の作付面積が前年比約1.6倍に拡大

<宮崎>「こいはるか」を今季から観光農園で栽培

<鹿児島>12月にも販売開始予定の新品種の愛称を一般公募

2018年2月14日 14時15分
毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20180214/k00/00e/040/338000c