大学院の博士課程で学ぶ学生や博士号を取得した研究員(ポスト・ドクター、通称ポスドク)の就職を支援しようと、浜松市は二〇一八年度、学生、研究員と市内中小企業とのマッチング(お見合い)事業を始める。市産業総務課は「同様の取り組みを他の自治体で聞いたことがない」としている。

同課によると、国は科学技術立国を目指し、任期付き研究員を増やす「ポスドク一万人計画」を一九九六年に打ち出した。しかし、就職先を広げられず、現状は定職に就けない若手研究員が増えている。

研究員から大学教員になれるのは一割程度といわれ「ポスドクは教員ポストの約束がない不安定な雇用待遇。経済的にも恵まれていないため、民間への就職を望む人も少なくない」と担当者。ただ、民間就職は担当教授のつてを頼るのが一般的で、企業情報も少なく門戸は狭い。

市はこういった専門性の高い知識を持つ博士人材の滞留を解消しようと、マッチング事業に乗り出す。市は一七年度、中小企業団体中央会などの紹介を受け、企業十四社を回り、人材を求める需要を確認した。

一八年度は七月と十一月、博士人材と企業との交流会を市内で実施する。東海エリアの静岡大、名古屋大、豊橋技術科学大、名古屋工業大に呼び掛け、各交流会に二十人を目標に集める。名古屋市内からも多く集まってもらえるよう送迎バスを用意する。

参加者は自分の経歴や研究テーマを一枚のポスターにまとめて掲示し、企業担当者に自己PRする「ポスターセッション」を繰り広げる。企業側はプレゼンテーションを行うほか、ブースを設けて参加者と交流する。

また、博士人材と企業のマッチングを先進的に取り組む名古屋大の交流会に、浜松市の企業の参加を促すため、ブース出展費を全額補助する。

産業総務課の担当者は「研究員には浜松の住環境の良さも併せて伝えたい。優秀な人材を取り込んで、企業の活性化につなげたい」としている。 



浜松市は十三日、一八年度予算案を発表した。その中から新規事業を中心に随時紹介する。(末松茂永)

2018年2月14日
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20180214/CK2018021402000041.html