外国人観光客の増加に伴い、京都市バスの車内混雑が深刻化している。市交通局も対策に本腰を入れ始めた。乗降をスムーズにするため、40年以上続いてきた乗車方式を改め、前扉から乗り運賃を先払いする方式の導入を決定。地下鉄への誘導策も打ち出す。外国人の個人旅行化が進んでおり、観光庁の担当者は「今後は他の地域でも交通機関への影響が出る可能性がある」としている。

春秋の行楽シーズンを中心に、年間5500万人の観光客が訪れる京都。キャリーバッグなど大きな荷物を抱えたままバスに乗ったり、小銭の用意に手間取ったりする外国人観光客も目立つ。混雑は慢性化し、市民から「バスに乗れない」との苦情が寄せられるほか、乗降時間が長引き定時運行への影響も出ている。

 観光庁によると、日本を訪れた外国人旅行者は6年連続で増加。京都以外でも、大阪や福岡では貸し切りバスの駐停車による道路混雑が発生。クルーズ船が寄港する沖縄県の宮古島ではタクシー不足が問題化している。

 そんな中、京都市交通局は昨年10月から、これまでの「後ろ乗り前降り」を改め、京都駅と銀閣寺前を結ぶ路線で計5日間、「前乗り後ろ降り」を試す実験を行った。

 かつては「前乗り」と「後ろ乗り」が混在していた市バス。経営の効率化を図るため、昭和47年に全路線で、現行の前降り運賃後払いに統一したが、最近は降車に便利なように乗客が車内前方に集まる傾向があり、時間がかかっていた。

 実験の結果、バス停での平均停車時間が11・5秒短縮。後ろ扉は車両中央にあり、車内のどこにいても降りやすかったことが要因とみられる。市交通局は今秋にも、実験を行った路線で導入し、全83路線のうち230円の均一運賃が適用される61路線に広げる方針だ。

 日本バス協会(東京)によると、乗車方式は運賃形態と関係が強く、均一運賃の場合は東京都や横浜市、名古屋市の公営バスなどのように前乗り先払いが多いが、大阪市営バスは乗り継ぎサービスの関係から「後ろ乗り前降り」になっている。

 京都市交通局は、均一運賃区間が乗り放題になり、観光客に人気のバス1日乗車券(500円)も混雑の一因と分析し、3月17日から100円値上げ。市バス全線と地下鉄が乗り放題になる共通1日券を300円値下げし900円とし、地下鉄への乗客分散を目指す。

 交通ジャーナリストの鈴木文彦さんは「先払い方式は合理的で、外国人にもなじみがあり、効果が見込める」と評価。一方、「京都は充実したバス路線に比べ、2路線しかない地下鉄で行ける場所は限られており、観光客がバスと地下鉄を乗り継ぐようになるかは不透明だ」と話している。

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