裁量労働制に関する厚生労働省の調査を巡り、同省は19日午前の衆院予算委員会理事会で精査結果を報告した。一般労働者には「最長の残業時間」を尋ねていた一方、裁量労働制で働く人に対しては単なる労働時間を聞いていた。質問方法の違う調査を比較し、一般労働者の労働時間の方が長くなるとの結果を出していたことになる。

 厚労省幹部は同日午前の野党会合で「一般労働者と裁量制を異なる手法で調査した数字を集計し、比較したのは不適切だった。おわび申し上げる」と陳謝した。問題となっているのは厚労省の「2013年度労働時間等総合実態調査」。今国会で提出予定の「働き方改革関連法案」に盛り込む裁量労働制の労働時間について、政府答弁の根拠になっている。

 同調査では一般労働者の1日の労働時間は9時間37分、裁量労働制で働く人は9時間16分だった。精査結果によると、一般労働者にのみ「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を尋ね、法定労働時間の8時間を足して労働時間を報告していた。このため、一般労働者の方が長時間働いているとの回答が多く集まりやすくなっていた。

 一般労働者の労働時間を「1日45時間」とする誤記が疑われるケースが3件あったことなども明らかになった。

 安倍晋三首相は1月の衆院予算委で同調査を取り上げ「裁量労働制で働く人の労働時間は、一般労働者よりも短いというデータもある」と述べていた。この後、調査に不備が見つかり首相は答弁を撤回、謝罪した。

 立憲民主党の逢坂誠二氏は予算委理事会後、記者団に「全く不誠実な対応だ。国民に相当大きな誤解を与えた」と述べ、政府の姿勢を批判した。

ソース
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27074410Z10C18A2MM0000/