大阪市が、空き家対策特別措置法に基づき、此花区にある築100年以上の空き家について、行政代執行による初めての強制撤去を始めた。市内には維持管理が困難な空き家が昨年末時点で約940件あるが、修繕などの改善済みは約350件。独居老人が政令市で最多の20万人超の大阪市では、死亡や転居に伴う空き家対策が大きな課題になっている。

 市は12日に撤去作業に着手。この空き家は木造平屋建て(延べ床面積約34平方メートル)で1916年建築。所有者は横浜市の60代男性で、約30年前から住人はいないという。
2016年3月、市民から「空き家が今にも崩れそうだ」と通報があり、同7月に市が所有者に改善を指導。勧告を経て昨年末には3週間以内の措置を求める命令を出した。昨年秋には外壁が崩れ、市は「通行人に危害が及ぶ」と判断し代執行での撤去を決めた。撤去費約150万円は所有者に請求する。

 戦前から発展した大阪市内には古い家屋が多い上に、独居老人の人数は人口が100万人以上多い横浜市を上回る。住人の死亡後も登記がそのまま残り、法定相続人の特定に時間がかかるなど対応が困難だという。

 空き家対策特措法は15年5月施行。危険な空き家を「特定空き家」に認定し、所有者に撤去や修繕などの助言、指導、勧告、命令ができる。命令違反には50万円以下の過料が科せられる。行政代執行は建築基準法でもできたが、新たに固定資産税関連の情報を利用して所有者を特定できるようになった。

 国土交通省などによると、昨年10月1日時点で特措法による指導や勧告などは9068件。代執行での撤去は13件で、所有者不明の場合に使う略式代執行が47件。政令市では神戸市が今年2月、初めて代執行による撤去を実施した。【岡崎大輔】

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