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2018年3月13日 9:59 発信地:マイアミ/米国
【3月13日 AFP】アフリカ系米国人が集う理髪店をめぐっては、散髪だけでなく、人々が交流するための場所にもなっていることは広く知られているが、この理髪店が男性客らの高血圧を抑える助けにもなる可能性があるとの研究論文が12日、発表された。

 米フロリダ(Florida)州オーランド(Orlando)で開催の米国心臓病学会(American College of Cardiology)の会合で発表された研究結果によると、米ロサンゼルス(Los Angeles)の理髪店に通う地元男性客を対象に行った実験では、来店時に訓練を受けた薬剤師と定期的に面談することで、高血圧症のある人の血圧を大きく低下させることができたという。

 アフリカ系米国人男性は、心臓発作と脳卒中の主要な危険因子である高血圧症の確率がほかの人種グループに比べて高く、また医師の治療を受けている確率も低い傾向がある。そのため、このアプローチを広範囲で採用することによって治療の突破口が開く可能性があると研究チームは主張している。

 論文の主執筆者で、米シダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center)シュミット心臓研究所(Smidt Heart Institute)の副所長を務めるロナルド・ビクター(Ronald Victor)氏は、「最先端の薬剤を、それを必要としている患者のホームグラウンド──今回の場合は理髪店──で直接手渡し、投薬を便利かつ厳密にすることで、アフリカ系米国人男性も他のグループと同様に血圧をコントロールできる」と説明する。

「このモデルの規模を拡大して維持できれば、数百万の命が救われ、多数の心臓発作と脳卒中を予防できる可能性がある」

 今回の研究では、ロサンゼルス郡にある52の理髪店に通う男性らを対象に実験を行った。被験者は高血圧症のある男性319人。2日間の測定値に基づく最高血圧が140mmHgを超えると高血圧と診断される。被験者は年齢が35〜71歳、地元理髪店の長年の常連客で、平均でほぼ半月に1回の頻度で店に通っていた。

■来店時の面談で数値改善

 実験では被験者を無作為に2グループに分け、一方には理髪店に行くたびに訓練を受けた薬剤師との面談を受けさせた。もう一方のグループは、健康的な生活様式を選択するよう理髪師から助言を受け、経過観察のために医師を受診するよう勧められた。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された論文は、理髪店で月1回薬剤師と面談したグループは他の男性客グループに比べて、最高血圧を平均で21mmHg以上低下させることができたと報告している。

 論文によると「理髪師のみと交流し、医師の診察を受けるよう助言された男性客グループは、最高血圧が実験開始時の155mmHgから6か月後に145mmHgに低下した」という。一方、理髪師と薬剤師の両方と交流を持った男性客グループでは、「最高血圧が実験開始時の153mmHgから6か月後に126mmHgにまで低下した」とされた。

 ビクター氏は「慢性疾患の高血圧症は生涯にわたって薬を服用し、生活様式を改善し続ける必要がある」ことを指摘する。

「高血圧の投薬治療を必要としている患者に薬を服用させることは、治療費と副作用が年々減少しているにもかかわらず、なかなかうまくいかないことが多い。しかし、今回のプログラムを通じて、この問題を乗り越えることができた」 (c)AFP

理髪店を訪れた人々(2008年7月11日、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Saul LOEB
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