けなければ、取る事が出来ない。取る前に先づ予備条件として成るべく平
穏に相手に接近しなければならぬ。人間はいづれも善を欲する。善を見て
は己も之にあやからんと集つて来る。故に表面に先づ王道の面を冠つて相
手と関係を附け、其の関係に伴つて人欲を遂げ、相手から物を取らんとす
る。すると彼は愛己の発動により取られまいとする。或は彼も亦王道の面
を冠つて我より取らんとする、我は取られまいとする。互に取らんとし取
られまいとし、そこに戦ひの形式を生ずる。欲は物の世界を対象とする。
物は力によつて支配される世界である。力を以つてする戦ひの、勝敗を決
する原則は、強大は弱小に勝つと言ふ事である。此の原則を実際に適用し
て、否応なしに弱小を仆して、覇者は勝利を占めんとする。よつて覇者は
一、己は強大の勢を持して弱敵を選び、
