https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180314/k10011364061000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001

3月14日 5時24分
春闘は、14日集中回答日を迎え、大手企業の経営側から労働組合に一斉に回答が示されます。これを前に「トヨタ自動車」が政府や経団連が数値目標として掲げた3%を上回る賃上げで事実上、決着するなど、去年を上回る賃上げが相次ぐ見通しです。

春闘の相場づくりに影響が大きい自動車業界では、「トヨタ自動車」が去年の妥結額の月額1300円を上回るベースアップを実施することで事実上、決着しました。

ベースアップは5年連続で、定期昇給や手当もあわせると、パートなども含めたすべての組合員の平均で3.3%の賃上げとなり、経団連が掲げた3%の数値目標を上回るとしています。

一方、「日産自動車」は3%には届かないものの、去年の1500円を大幅に上回るベースアップを回答する方針です。

また、2年に1度交渉を行う鉄鋼大手も3%には達しないものの、前回を上回る水準での賃上げを回答する方針を固めたほか、日立製作所やパナソニックなど大手電機メーカー13社もベースアップに相当する賃上げとして、去年を上回る月額1500円で最終調整しています。

ことしの春闘では政府や経団連からの要請を踏まえ、多くの大手企業で去年を上回る賃上げが相次ぐ見通しで、これから本格化する中小企業の労使交渉に影響を与えそうです。

3%超賃上げの企業は

ことしの春闘で経団連は賃上げの目標を3%に掲げていますが、好調な業績を背景に人材への投資を重視してこの数値目標を超える賃上げを決めた企業もあります。

関東や関西で266の店舗を展開しているスーパーマーケット大手の会社は店舗の拡大とともに売り上げを伸ばし増収が続いています。

好調な業績を追い風にことしの春闘で労働組合は定期昇給とベースアップなどを合わせて3.86%の賃上げを要求し、会社側が満額回答することで交渉が妥結しました。

具体的には、基本給の引き上げにあたるベースアップが5856円、定期昇給分や手当などを加えた総額で1万1231円となりました。

会社によりますと、社員の待遇改善を進めることで優秀な人材を確保し将来的な売り上げの増加につなげようという狙いがあるということです。

森下留寿常務は「小売業は人材が第一で単純に商品や店舗がよければ競争に勝てる時代ではない。賃上げで従業員の意欲を高めて売り場を活性化することが結果的には利益につながるという思いで、まずは『人への投資』に力を入れていきたい」と話していました。

また、労働組合の田岡庸次郎執行委員長は「小売業の賃金水準は他の産業と比べて低く、人手不足は労使共通の課題だ。賃上げは従業員にとって生活の糧なので最も重視して要求した。従業員の大半を占めるパートタイマーも含めて全体の改善が実現できたと考えている」と話していました。

「防衛的な賃上げ」の労働組合も

人手不足が深刻化するなか、経営環境が厳しくても人材確保のために賃上げを行ういわゆる「防衛的な賃上げ」の必要性を訴えて交渉を行っている労働組合もあります。

埼玉県川越市に本社がある従業員およそ800人の運送会社では、これまで4年連続で子どものいる社員への手当の支給などの賃上げを続けてきました。

会社側は人手不足や燃料代の高騰などを受けて業界全体を取り巻く経営環境は厳しいとしていますが、ことしの春闘で労働組合は人材を確保するためにも継続的な賃上げを求めています。

特に、強く求めているのは基本給の引き上げです。基本給は退職金やさまざまな手当の基準にもなり、組合は将来にわたって賃金全体が底上げされると訴えています。

牧野智一執行委員長は「人手不足が深刻化するなか、人材確保のため特に基本給に力を入れて賃上げを要求していきたい」と話しています。

会社は15日、組合側に回答を示すことになっていて、澤田修代表取締役は「ドライバーなどの人材を確保するには、賃金を第一に考えなければならない。社員の家族も含めて幸せに暮らせるよう、会社の体力にあった形で回答していきたい」と話しています。