>>619
大竹 文雄
大阪大学 社会経済研究所 教授

八田先生と星先生の対談。標準的な経済学で、現状をうまく整理されて、的確な政策提案がされていると思います。後編も合わせてお読みください。


アベノミクスをどう評価するか

八田 まず、マクロ政策全体では、失業率が低下したことが大きな成果だと思います。

 一方、「失業率が下がったのに、賃金が上がっていない」とよくいわれますが、これは問題ではないと思います。景気の回復面で非正規雇用が増えた結果、
雇用者全体に占める非正規雇用者の割合が増えたために、その分平均賃金が下がったのです。やがて非正規労働者の待機者数が少なくなると、非正規雇用者の賃金は上昇します。
いままで賃金が上がらなかったのは、まだ調整過程にあったためです。時間の問題です。現実に、いまアルバイトやパートの賃金は上昇しています。今後、雇用者全体として賃金は上がっていくとみています。

八田 金融政策が実体経済に影響を与えるまでにはある程度の時間が必要です。いま、不動産価格が上昇し始めています。それは徐々に担保価値を増やし、投資を増やすでしょう。いまの政策を続ければよいと思います。
そのうちいろいろなことがいっせいに動き出しますから、そのときにコントロールする方策を整えておくことのほうが重要だと思います。

星 金融政策は時間的な遅れを伴い、しかも不安定。うまくコントロールするのが難しいわけですね。

ただし、ここでインフレはまだ日本では起こっていないことを確認しておかなければならない。日銀の金融政策がようやく効いてきてこれからインフレになるという可能性はあります。
しかし、いままではなかなかインフレにならなかったという経緯もあるわけです。

 日銀としては、いまインフレの問題を論じ始めるというのは時期尚早である。デフレからの完全な離脱に向けて、いままで以上に緩和的な金融政策の模索を続けなければならない。
その一方で、最終的にインフレが起こってくるときには、それに速やかに対処しなければならないし、その前からある程度インフレのコストを下げるような制度改革も考えておかなければならない。そういう難しい時期にあるのだということだと思います。

八田 同感です。

https://m.newspicks.com/news/2001414/