4月3日 18時31分
日本の科学者を代表する国の特別の機関「日本学術会議」は、防衛装備品の開発につながると期待される研究に防衛省が資金を提供する制度について、全国の大学や研究機関のおよそ3分の1が応募にあたってなんらかのガイドラインや審査の手続きを設けているとするアンケート結果を公表しました。
日本学術会議は、平成27年に始まった、防衛省が大学などに研究資金を提供する制度について「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」としたうえで、軍事的な安全保障の技術研究と見なされる可能性のある研究について、各大学などが、その適切性を審査する制度を設けるよう求める声明を去年4月、発表しています。
日本学術会議では、この声明についてどのような対応がとられたのかことし2月から全国183の大学や研究機関を対象にアンケート調査を行いました。
その結果、135の大学や研究機関から回答が寄せられ、このうち防衛省の制度への応募の際になんらかのガイドラインや審査の手続きを設けていると答えたのは全体の34%でした。
一方で全体の30%がガイドラインや審査の手続きはなく検討もしていないと答えました。
また防衛省の制度への応募を認めたことがあると答えたのは全体の22%で、76%は認めたことがないと答えました。
日本学術会議では、今後、物理学や天文学など各分野の研究者でつくる学会についても調査し、日本の軍事的な安全保障の技術研究について実態を把握したいとしています。
各大学の方針は
防衛省が、3年前大学などに研究資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を導入したことをきっかけに、この制度への対応や軍事目的につながる研究への方針を明らかにする動きが広がっています。
このうち京都大学は先月28日に、「本学における研究活動は、社会の安寧と人類の幸福、平和へ貢献することを目的とするものであり、それらを脅かすことにつながる軍事研究は、これを行わない」とする基本方針を公表しました。併せて、防衛省の「安全保障技術研究推進制度」については、応募を認めないことを決め、学内に文書で周知したということです。
また、琉球大学は去年10月に発表した基本方針の中で、軍事利用を直接目的とする研究は行わない、国内外の軍事を所管する公的機関からの資金提供を受けて行う研究は、極めて例外的な場合を除き行わない、といった原則を明らかにし「安全保障技術研究推進制度」についても申請しないとしています。
一方、私立の大学では、関西大学がおととし12月に、「安全保障技術研究推進制度」について「申請を認めない」とする方針を示したほか、中央大学や上智大学が相次いで同様の方針を発表していて、法政大学も「当分の間認めない」としています。