http://www.bbc.com/japanese/43751566

2018/04/13
アレックス・テリーン BBCニュース健康担当記者

1日にわずか1杯でも飲酒をすると、寿命が縮まる可能性がある。最新の大規模研究がそんな結果を導き出した。
飲酒する60万人を対象に調べたところ、1週間に5杯から10杯のアルコール飲料を飲むと、寿命を最大6カ月短くなる可能性があると判明したという。

研究によると、寿命を縮めるリスクはアルコール消費量が多くなるにつれて高まる。1週間に18杯かそれ以上を飲む人は、寿命を最大で5年失うという。
専門家はこの研究が、軽い飲酒は健康に良いという説に異議を唱えるものだと話している。

研究で科学者たちは、19カ国で飲酒する人の健康状態と飲酒の習慣とを比較し、40歳以降の人生でずっと同じように酒を飲み続けた場合、寿命がどれぐらい縮まる可能性があるのかを計算した。

科学者たちは死亡リスクを上昇させない安全上限が、1週間あたりアルコール飲料約12.5ユニットだと発見した。これはビール約5パイント、あるいは平均以上のアルコール度数を持つワインを175ミリリットルのグラスで5杯分に相当するという。
ただし研究チームは、どの程度の飲酒でも心血管疾患のリスクを上昇させるとも指摘している。
週12.5ユニットのアルコールごとに、発症リスクが上昇するのは以下の通り――。

脳卒中 14%
命にかかわる高血圧症 24%
心不全 9%
命にかかわる大動脈瘤 15%

飲酒は致命的ではない軽度の心疾患に関してはリスクを低める関連性を持つが、この効用はそれ以外の心疾患のリスクを高めることで「無効」になると、研究チームは位置づけている。
過去の研究では赤ワインを飲むことは心臓に良い場合もあると言われていたが、その効用は過大評価されているという指摘もあった。

別のデンマークでの研究は、週に3〜4回の飲酒は2型糖尿病のリスクを下げることと関係していると結論づけている。
今回の研究には参加しなかったシェフィールド大学の心血管医学教授ティム・チコ氏は、「結局のところ、飲酒が健康に良いなどあり得ない。それがこの研究ではっきりした。あまりに出来すぎた話というのは、往々にしてこういうものだ」と述べた。

「飲酒する人が、命にかかわらない心臓発作を起こす可能性が普通の人より少ないとしても、飲酒は致命的な心臓発作や脳卒中などを含む他の心疾患のリスクを高める。なので、飲酒の効用は、飲酒によるリスクで相殺される」

英政府は2016年、男性も女性も週に14ユニット(週に約6杯)より多くのアルコールは取らないほうが良いと提言し、飲酒ガイドラインを厳しくした。今回の研究の著者たちは、分析結果は英政府の対応を支持するものだと述べた。
イタリアやポルトガル、スペインなどが推奨する飲酒上限は英国のこのガイドラインより50%近く高く、米国の男性に対する飲酒上限はほぼ英国の2倍だ。

しかし、この研究に一部投資した英国心臓財団の上級栄養士ビクトリア・テイラー氏は、そのことに英国は「満足してよい」ことを意味しないと語った。
「多くの英国人が通常、推奨されるより多くの酒を飲んでいる」とテイラー氏は語った。
「飲酒ガイドラインはあくまでも上限であって目標量ではないと、私たちは常に念頭におくべきだ。飲む量はこれより低く抑えようと、心がけるべきだ」

研究の筆頭著者、ケンブリッジ大学のアンジェラ・ウッド博士は、「もしあなたが既にお酒を飲む人なら、量を減らせばもっと長生きできるかもしれないし、色々な心血管疾患リスクも下がかもしれない。それが、この研究で特に言いたいこと」だと話している。

(英語記事 Just one alcoholic drink a day could shorten your life, study says)

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