※続きです

それが連鎖反応を起こせば、本当にブラックアウトが起こるという。
これらはしかも、数秒単位で進む。

万が一、首都圏でそんな事態になれば、修復に数日かかる可能性もある。
産業界は未曾有の被害を受けるだろう。

電気は、常に、現在の需要に合わせて発電しなければならない。
だから電力会社は、最低でも大型火力発電所が突然1基不調になって脱落しても大丈夫なぐらいの余力は見込みながら、発電量を、瞬時、使用量に合わせているわけだ。

■島国ニッポンの「不都合な真実」

私がこれまで常に訴えてきたのは、太陽光と風力の発電は、いくら施設を増やし、年間の総発電量を上げたとしても、いざという時ゼロ近くに落ち込んでしまうので、必ずそれ以外にも、最大需要量を賄う発電施設を確保しておかなければならないという不都合な真実だった。
そして、その、いざというときの火力発電所は、普段、再エネが発電している間は、発電を抑えなければならない。

使える火力を使わずに、いつでも使える状態で待機させておくというのは、経済の観点からいえば、ありえないことだ。
はっきり言って、そんな市場で生き残れる火力発電所はない。

結局、そのしわ寄せは消費者にくるし、また、安価で安定した電気が保証されなくなった産業界にくる。
それが、今年の冬、現実となった。しかも、この状態は、いくら電力事業を自由化しようが変わらない。

エネルギーの安全保障は、すべての安全保障に直結することを、私たちはそろそろ真剣に考えるべきだ。
ドイツのように、隣の国と送電線を繋げて、足りない時は高くても買い、余った時は、お金をつけてでも引き取ってもらえるという恵まれた国とは一緒にならない。
私たちは、この島国の中で、完結した電力システムを作り、産業を回し、生活を守らなければならない。

有効で、安価な蓄電方法がまだ現実となっていない今、再エネ電気だけで産業国がやっていけないのは、ドイツの例を見ればすでに明らかだ。
そんな中で、原発をゼロにすれば、結局は火力依存になる。

石油もガスもない日本が火力に依存するということは、他国に依存するということに等しい。
日本のエネルギーの自給率は、たったの8%だ。

石油やガスの輸送が滞ったら、いや、値が上がれば、どうするのか?
もう少し、国益を見据えた現実的な議論はできないものだろうか。

■追記
ドイツを中心とする欧州のほぼ全域で電力の周波数が低下したことは事実であり、それは、3月上旬にドイツ大手のシュピーゲル誌や経済誌ハンデルスブラットなどが報道したように、広域的に電力の需要と供給がアンバランスな状態に陥ったことを意味する。
なぜ、そうした状況が生じたかについては、内外の調査機関が、今、調査中であり、その結果を踏まえ、ドイツと違って周辺国とネットワークが繋がっていない我が国の取るべき道は何かも含めて、このコラムの続報を執筆したいと思う。

※おわり〆  .