千葉日報 2018年5月14日 05:00 | 無料公開

「ベビーカーをご利用になるお客さまは周りのお客さまに配慮し、十分ご注意ください」−。
東武鉄道が県北西部を走行する東武野田線などの電車内で表示するこんな注意喚起が3月末以降、ツイッター上で波紋を広げた。
「配慮すべきは周囲の乗客だ」「横柄な親がいるのは事実」などと議論は白熱。同社は、文言が一方的だったとして変更を検討しているという。

東武鉄道によると、注意喚起は東武野田線と東武東上線の一部車両内で、ドアの上にあるディスプレーに表示。東武野田線では2013年から、18編成で導入している。
担当者は、呼び掛け方が偏っていたと認め「駅や車内での配慮は、双方にお願いしてきたつもり」と釈明する。利用者からは賛否、さまざまな意見が寄せられており「改善のため、活用していく」としている。

議論の発端になった投稿をしたのは埼玉県鶴ケ島市の男性(56)。今年3月末、ディスプレーの写真を添え「子連れで移動する人に配慮するのは周りの人であるべきでしょ」などと声を上げた。

男性は、障害者の車いすを押して電車に乗ることがあるといい、取材に「弱い立場の人が萎縮してしまうような状況は良くない」と訴える。

男性のツイートは4月下旬までに1万5千回以上転載された。
「日頃から神経をすり減らしている親が、ますます乗車しづらくなる」などと賛同する意見の一方、「ベビーカーにぶつかられて謝罪もなかった」「席を譲られて当然という態度が悪い」といった反論もあった。

国土交通省などは14年3月、ベビーカーの優先マークを作るなど安全利用や理解促進のためのルールを策定。
交通各社も、優先スペースを車内に設けるなどハード面の整備を進め、車内放送や駅のポスターで相互協力を求めている。東武野田線の対象車両でもベビーカーや車いす利用者のフリースペースが設置されている。

東武鉄道によると、現行の注意喚起を始めたのは11年ごろからという。
宇都宮大の大森宣暁教授(都市交通計画)は
「日本では公共交通機関で優先対象者に席を譲ったり、手助けをしたりする意識が低いが、近年それが変わってきて文言が注目されたのではないか。公共の場所では、全員が周囲に思いやりを持つことが大切だ」としている。

東武鉄道が電車内で表示する注意喚起=3月25日(乗客提供)
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