2018.5.15 15:14

 飲食店を名乗るツイッターアカウントが、大学職員から50人分の予約を無断キャンセルされた−と投稿した。ツイッターは大学職員を非難する投稿で炎上したが、その後、飲食店も大学も架空の存在であることが分かった。「無断キャンセル」に憤った人たちは怒り損となり、ネットリテラシーの危うさを改めて浮き彫りにした。

 投稿したのは長野県安曇野市にあるとする「うどんや 蛞蝓(なめくじ)亭」を名乗るアカウント。13日に「無断キャンセルに合いました。50人で貸切の予約で、料理を準備してお待ちしてましたが、予約時間過ぎても見えず、此方から電話するとキャンセルとの返事。キャンセル料を請求したら、そんな説明は受けていないと逆ギレ。国際信州学院大学の教職員の皆さん、二度と来ないでください。#拡散希望」と、無駄になった料理とされる写真とともにツイートした。

 ツイッター上には「こんな事絶対に許すな。ましてや私立でも教育者の集団、人に物事を教える立場の人が約束を平気で破る行為を許したら、また別の場所でも被害が出る」「食べ物の廃棄の無駄もそうですが、作った人の心のことを考えると胸が痛いです」などと、「国際信州学院大学」職員への批判や蛞蝓亭への同情、励ましが相次いだ。

 蛞蝓亭は「お気遣いありがとうございます。時間が経つとすぐに傷んでしまうので、泣く泣く廃棄しました(T_T) また今度の機会に来ていただけると嬉しいです。。。」などと返信した。

 ところが、この「国際信州学院大学」は匿名掲示板「5ちゃんねる」のユーザーが1月に作り上げた架空の大学。公式ホームページまで存在するが、掲載されている写真は他大学のサイトなどから流用している。

 「蛞蝓亭」のツイッターアカウントは4月に開設されたが、店の存在を確認することはできない。そもそも飲食店がナメクジを店名にするとは考えられない。「国際信州学院大学」を取り巻く架空コミュニティーのツイッターアカウントとして、5ちゃんねるユーザーが作ったとみられる。

 「無断キャンセル」に対する反応の中にも関連アカウントによるものがあった。

 「国際信州学院大図書館」なるアカウントは「これはひどいですね… なめくじ亭さんは図書館職員の新年会でも利用しましたが、店主と奥様の2人だけと少ない人員ながら、心のこもったおもてなしをして下さりました。50人分の食事を準備するのにどれほどの手間と時間が掛かったか考えると胸が痛みます…」とツイート。

 「国際信州学院大学」学生を名乗るアカウントが「先生方に代わって謝ります。誠にごめんなさい」と謝罪するなど、まじめな反応に混じって大がかりなフェイクが展開されていた。

 「国際信州学院大学」も「蛞蝓亭」も架空だと分かると、ツイッター上には「だまされた」という反応のほか、「国際信州学院大学のやつ、あれだけ作り込めばリテラシーない人は簡単に騙せるってことでしょ」と、ネット上にあふれる情報を取捨選択する能力の重要性を指摘する声も上がっている。

 「蛞蝓亭」は14日もこんなツイートをして楽しんでいる。

 「ツイッター効果のおかげか今日は朝からたくさんの方にご来店頂きました。ランチタイムは満席でご迷惑おかけしました。この時間になりようやく一息つけました。思いがけず多くの反応があり戸惑っていますが、ご心配くださった皆様ありがとうございます」

http://www.sankei.com/life/news/180515/lif1805150024-n1.html
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