橋下事件の広島地裁平成20年10月2日判決(抜粋)

これらのことからすると、原告らに対し本件刑事事件について上記のような多数の懲戒請求がされたのは、
本件各発言により被告が本件放送の視聴者らに対し原告らに対する懲戒請求を勧めたことによると優に認定することができる。
なお、被告は原告らを対象者としてなされた懲戒請求は請求権者である一般市民の自発的意思に基づくものであり、
被告の本件各発言と一般市民による懲戒請求との間に因果関係はないなどと主張するところ、本件各発言が視聴者らに対して
懲戒請求を呼びかけるものであること、本件各発言が契機となってこれらの懲戒請求がされたことは前述のとおりであり、
そうである以上本件各発言と原告らに対する懲戒請求との間には因果関係があることは明らかである。

4 争点(4)に対する判断
上記のとおり、本件番組は、全国19のテレビ局において放送され、本件放送後平成20年1月21日ころまでに申し立てられた懲戒請求の件数は、
原告足立に関するもの639件、原告井上に関するもの615件、原告今枝に関するもの632件、原告新川に関するもの615件であったことがそれぞれ認められる。
また、原告らが本件発言ア及びウないしオにより名誉を毀損されたことは上記1で認定したとおりであり、さらに、
甲13の@ないしB及び15の@AD並びに弁論の全趣旨によれば、原告らは上記懲戒請求に対応するために答弁書を作成しなければ
ならないなど相応の事務負担を必要とし、かつ、それ以上に相当な精神的損害を被ったことが認められる
(もっとも、被告の呼びかけに応じてされたとみられる懲戒請求の多くが一定の書式を用いたものであり、その内容も同一であるか少なくとも
大同小異であったことは甲2の@ないしIによって認められ、また、多数の懲戒請求が行われたとはいえ、広島弁護士会綱紀委員会においては
ある程度併合して処理されたことは甲20の@ないしIによって認められるところであり、広島弁護士会がいずれの懲戒請求についても原告らを懲戒しないと
決定したことも前認定のとおりであって、懲戒請求を受けたことによって原告らが被った経済的負担について甲13のA(陳述書)において
原告今枝が陳述するところはそのままでは採用しがたい)。
さらに、いずれも弁護士として相応の知識・経験を有すべき被告の行為によってもたらされたものであることにも照らすと、
これらの原告らの精神的ないし経済的損害を慰藉するには被告から原告ら各自に対し200万円の支払をもってするのが相当である。