市内では昨年末から今年にかけ、中高年の市民による猫の多頭飼育崩壊が、二件続いて表面化。五十匹近くが無秩序に飼われていたり、猫が屋内外を出入りして近隣住民から鳴き声やふんなどへの苦情が出たりした。部屋がふん尿でまみれ、飼い主は玄関で寝ていた事例もあった。
動物愛護関係者によると、多頭飼育に陥るのは、コミュニケーションが苦手で仕事に就けなかったり、地域から孤立したりして心の支えを動物に求める飼い主が多い。不妊去勢手術などをして適切に猫を飼うには一匹三万円以上かかるが、経済的な余裕がないため払えず、引き取るボランティアの負担も大きいという。
そこで市社会福祉協議会は、猫の引き取りに協力した動物愛護NPO法人「LOVE&PEACE Pray」(大津市)の蔵田和美代表(47)や、甲賀市の県動物愛護推進員田中ヒロヤさん(47)に相談。二人は市や県動物保護管理センターなどに参加を呼び掛け、三月から市役所で月一回の会議を始めた。
市からは生活環境、障がい福祉、社会福祉の三課が部署を横断して出席。社会福祉法人のケアマネジャーや精神障害者の支援団体も加わり、飼い主のケアも話し合う。今後は参加する十二者が目標を持ち寄り、解決に向けて誰が何をすべきか検討していくという。
蔵田さんと田中さんは「動物愛護から関われば飼い主の心は置き去り、人の福祉から関われば動物は放置だった。官民を超えて手をつなげば、人も動物も救うモデルケースができる」と期待する。
中日新聞 2018年5月29日
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20180529/CK2018052902000005.html