都心の高級物件は即完売。転売されてもすぐに買い手がつく。それが常識だった。
だが、潮目が変わった。億ションが売れ残っている。そうなると、価格を下げるしかない。
不動産崩壊の序曲が聞こえる。

■買い手がつかない

東京屈指の高級住宅街・番町(千代田区)。江戸時代から続くお屋敷街で、
域内には名門小学校として名高い番町小学校や美智子妃も通った雙葉小学校がある文教地区でもある。

そのうえ、JRや地下鉄の駅も至近で、生活は便利なのに閑静。都内に住む人間にとって憧れの住宅地だ。

その高級住宅地で異変が起こっている。新築の超高級マンションで「投げ売り」が始まっているのだ――。

昨年8月に竣工したばかりの『プレミスト六番町』は、'16年に販売開始となり、昨年中に完売していたはずだった。

だが、入居開始からわずか半年で、本誌が確認しただけでも全46戸中4戸が売りに出されている。
そのすべてが「新築未入居」のまま(2018年5月現在)。
つまり、誰かが「転売目的」で購入したが、思うように買い手がつかず売れ残っている、というわけだ。

そんな億ションの話は庶民的なマンションを買った自分には関係がない――そう考えるのは早計だ。
都心の優良物件の価格が下がれば、郊外の物件も下がっていく。これについては後述する。

金融コンサルティング会社、マリブジャパン代表の高橋克英氏が言う。

「私は仕事柄、富裕層とお付き合いをするため、不動産の情報もチェックしていますが、
最近2億、3億円といった物件が新聞の折り込みチラシに入っていることが目につくようになりました。

特徴は竣工まもない億ションが『新築未入居』のまま、売りに出ているケースが増えていること。

売り出し価格を見ると、分譲時の価格と同等か、1〜2割高い程度です。
この価格では税金などのコストを考えれば、儲けにならないか、損をする可能性があります。

というのも、購入後5年以内に売却すると、短期譲渡所得として売却益の約4割が税金として持っていかれる。
さらに登記費用や仲介手数料などもかかるため、短期転売狙いなら、
本来、2割程度は上乗せしないと割が合わないはずなのです」

本誌は'17年以降に都内で新築されたマンションのうち、1億円を超える高級物件を精査した(5月10日現在)。

高橋氏が言うように、分譲時の価格より1〜2割程度上乗せされた金額が多い。
だが、その金額では売れない、というのが実情なのだ。

住宅ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。

「超高級物件は、一般の人は買わないので、
販売する業者はまず自社での購入実績がある投資目的の富裕層にあたります。
これまではその段階で売れていたので、一般の人が広告を目にすることがなかった。

ところが今は富裕層に情報を流しても売れないため、不動産情報サイトなどにも掲載されています。
誰でも見られるネットサイトで公表されているものは、売れ残っている物件と考えて間違いないでしょう」

郊外の物件ならいざ知らず、千代田区や港区、中央区といった都心の一等地に建つ高級物件は、
価値が下がらないとされてきた。売り物が少ないため、今後も値上がりするとまで言われてきた。

■誰がババを引くか

だが、その物件に住むことなく転売で稼ぐ目的で値段を釣り上げることは所詮、マネーゲーム。
すでに誰が最後にババを引くか、押し付けあう段階に入っている。

「いま不動産業界は『崖っぷち』にあり、いつ暴落してもおかしくない状況です。
いまなら、まだ売り抜けられると考え、分譲価格よりも高値で売りに出しているのでしょうが、
今後、不動産価格が現在よりも高くなると考えている人は少ない。

そうなると、せめて分譲時の価格で売れればいいとあきらめる人が増え、さらに価格は下がっていく。
不動産価格が上がり始めた'13年の水準くらいにまで暴落するかもしれません」(榊氏)

事実、前出の『プレミスト六番町』の4億6000万円の部屋は分譲時と同額だし、
それとは別の分譲時2億9900万円だった部屋ははじめ3億200万円で売りに出されていたが、
買い手がつかず、つい先日、2億9300万円にディスカウントされた。

分譲時の価格より安い。売り主は1000万円単位の損を覚悟で、売りに出しているわけだ。

続きはソースで

現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55675