合意には二段階あるということを知らなければいけない。
すなわち、形式上の合意と、実際上の合意とを。

たとえば、いくら会談で、劇的な合意がなされたとしても、
それだけで実際上の核廃棄が行われたとは言えない。
この段階ではまだ1ミリも核廃棄が進んでいない。
これが形式上の合意ということだ。

形式上合意して、いざ、実際に査察が始まったり、検証が始まったりした時に、
そのやり方について、いざこざが起こるかもしれない。
真に核廃棄が進むためには、そこで実際に核廃棄が行われる「合意」が為されないといけない。
これが実際上の合意だ。

今回キムジョウンは、トランプを立て、笑顔で、友好ムードで会談をするだろう。
そうしてトランプと手を携えながら、共同で声明を出す。
すなわち、完全に検証可能な核廃棄に「合意」したと。

そこでみんなが手を叩いて喜んで、二人を称賛するものまで出てくるわけだが、
言うまでもなく、この合意は「形式上の合意」だ。
この時点ではまだ、核廃棄は1ミリも進んでは無い。

さあ、問題はここからだ。
金正恩の狙いは、劇的な「形式上の合意」で、経済制裁の段階的解除を
勝ちとるということだ。
一端それを勝ち取ったら、あとは現場の「実際上の合意」をじらしながら、
時間稼ぎをする。
なんだかんだ、行き違いを作ればいいわけだ。
ここはこういう話じゃない、あそこはそういう話じゃなかった、と・・。
つまり、実際上の合意は上手くいかない、という形を作ればいい。

今、一番大きな問題は何かというと、「実際上の合意」はその時、実際に廃棄する時にしかあり得ない。
廃棄しないうちの合意は、なんの意味もない。
にもかかわらず、形式上の合意だけで、歓喜し、称賛する人が出てくるということ。
これでは金正恩と中国の思うツボだ。
なぜはめられるかというと、アメリカは完全に検証可能な核廃棄が行われるという
「形式上の合意」を求めているからだ。
それを「成果」と位置付けてる。
「形式上の合意」はなんの実際上の「成果」にはならないのにだ。