https://mainichi.jp/articles/20180614/k00/00m/030/101000c

中国・北朝鮮
人的往来が再び活発化 制裁緩和先読み
毎日新聞 2018年6月13日 20時44分(最終更新 6月13日 21時42分

 北朝鮮国境に近い中国東北部の吉林、遼寧の両省で、北朝鮮との人的往来が活発化している。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が3月と5月に相次いで訪中し、中朝関係改善の動きが加速する中、米朝首脳会談の開催を受けて制裁緩和を見越した動きも出始めている。【上海・工藤哲、丹東(中国遼寧省)で河津啓介】

 「暖かくなるにつれ、北朝鮮から国境を越えて中国の工業団地に来る出稼ぎ労働者が明らかに増えてきた」。吉林省延辺朝鮮族自治州の中朝貿易関係者は13日、こう指摘した。

 出稼ぎ労働者の派遣は北朝鮮の重要な外貨獲得手段だ。かつて工業団地では北朝鮮国民が制服姿で集団生活し、衣類や靴などを生産していたという。昨夏の国連安保理制裁で、北朝鮮労働者の新規受け入れが禁じられ、その数は減少していた。しかし、3月以降は南北首脳会談、金委員長の2度の訪中などを受け、雰囲気が変わってきている。

 5月中旬、中朝国境貿易の拠点、遼寧省丹東市中心部の税関施設前に、10人ほどの女性が集まっていた。いずれも胸に北朝鮮指導者の肖像入りの赤いバッジを着けている。女性らは荷物を路上に置き、人待ち顔で立っていたが、迎えの車に次々と乗り込んだ。丹東の地元住民は「北朝鮮からの出稼ぎ労働者だろう。昨年から今年初めにかけて格段に減ったが、最近再び目につくようになった」と話した。

 中国政府は「国連決議を完全履行している」と強調し、労働ビザの発給は停止しているものの、北朝鮮労働者は短期の「越境証明書」を利用して中国入りし、中国の中小企業に雇用されているとみられる。低賃金でよく働く北朝鮮労働者に対しては、もともと潜在的需要が高く、中朝関係改善と共に中国企業側も北朝鮮労働者を雇用する抵抗感が薄れている模様だ。
 また、国境を流れる図們江(北朝鮮名・豆満江)の北朝鮮側で、中国企業によって観光開発された地域への訪問客も増加傾向にある。南北の融和ムードから、吉林省内の北朝鮮レストランを訪れる韓国人も増えているという。

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