6/14(木) 5:55配信
沖縄タイムス

◆民泊奔流(2)困惑

静けさ破る中国語の怒鳴り声 住宅地に現れた「ヤミ民泊」 住民も把握できず
車も通れない狭い路地に立つ壺屋町民会自治会長の島袋文雄さん。「壺屋は民家と民家の距離が近く宿泊施設には向かない」と話す=那覇市壺屋
 那覇市壺屋の風情ある赤瓦の古民家。2月早朝、静けさを破る、中国語の怒鳴り声。子どもの激しい泣き声が続いた。

 古民家は民泊。隣のアパートに住む女性(39)は、騒ぎで目覚めた。深夜、若者の大騒ぎもあった。いつものことに窓を閉めたが、もう寝付けなかった。

 隣家が民泊と気付いたのは入居後。看板もなく、運営者も分からない。騒音に強いストレスを感じる。「知っていれば他を選んだ。日常生活にない音や声を聞かされるのはきつい」

 壺屋町民会自治会の島袋文雄自治会長は困惑する。「民泊は把握していなかった」。実は昨年、企業が自治会に依頼してきた。「民泊を運営したい。空き物件を紹介してほしい」。役員会に諮ったが、断ることで一致した。「近所トラブルになりそうな案件を、自治会が推薦するわけにはいかない。だが、個人がやることまでは口出しはできない」

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 住居用の一戸建てや集合住宅を宿泊用に貸す民泊。東京五輪を控え、宿泊施設の不足が懸念されており、政府が推進する。外国人観光客の増加も追い風に、東京や大阪などの大都市、京都や北海道など観光地で参入が相次ぐ。民泊ブームは、沖縄にも奔流となり到達した。

 民泊は、旅館業法により届け出が必要だが、無許可でも罰則は3万円程度。稼働率を高めれば賃貸の2〜3倍の収益が得られる。そのため、宿泊業を禁止された住居専用地域や火災報知機がない物件で「ヤミ民泊」が広がる。

 民泊を選ぶとき、利用者はサイトで、料金や間取りを確認する。「ヤミ民泊」とみられる物件は、契約しなければ住所は分からない。そのため、近隣住民でもその存在は確認しにくい。

 5月、記者は大手サイトに掲載された3軒の民泊がある本島南部の住宅地を訪ねた。明るい一戸建てが並ぶ海辺の住宅街。サイトの写真にあった建物や生け垣の特徴から2軒を探し当てた。「民泊があるみたいですが」。通りかかった住民と自治会関係者に問い掛けた。「えっ」。皆、息をのんだ。

 6月。民泊3軒の登録はいつの間にか消えていた。(特報・新崎哲史)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180614-00263957-okinawat-oki