子ザルを抱く雌ザル(左)。生まれた当初は、祖母ザル(右)が抱いて離そうとしなかった(島根県大田市の代官山動物園で)
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 島根県大田市大田町の代官山動物園で昨春、生まれるはずのない赤ちゃんザルが誕生した。繁殖を制限するため約6年前、すべての雄に去勢手術を行っていたからだ。祖母ザルが母ザルから赤ちゃんザルを奪って子育てを始めたため、一時は成長が危ぶまれたが、飼育員の世話で元気に育っている。

 1957年に完成した同園は、シカやヤギ、アライグマなど約10種類を飼育。市の指定管理者で公益財団法人「市体育公園文化事業団」の飼育員2人が世話をしている。

 家族連れなど来園者に人気なのが、ニホンザル9匹(雄5匹、雌4匹)だ。約6年前は26匹いたが、繁殖を制限するため全ての雄に去勢手術を行い、その後、仲間同士のけんかでけがをするなどして8匹にまで減っていた。

 昨年3月、飼育員の祭田耕三さん(79)が世話をしようと園舎に入ると、雌ザルが小さな赤ちゃんザルを抱いていた。近くに胎盤も残っており、出産したことがわかった。「生まれるわけがないので、本当にびっくりした」と祭田さんは振り返る。

 園舎の網目は細かく、野生のサルの侵入は考えにくい上、仮に入り込んでも群れから攻撃を受けると予想されることから、なぜ生まれたのかは今も謎のままだ。

 生まれて数日後には、自身の子と勘違いしたのか祖母ザルが子ザルを抱いて離さなくなったという。母乳が出ない祖母に抱かれた子ザルはみるみる衰弱していった。「これでは死んでしまう」。祭田さんは虫取り網で子ザルを取り返し、園舎を仕切った別の部屋に祖母ザルを入れた。

 ところが、祖母ザルは翌日には仕切りをくぐり抜けて子ザルを抱いていたという。同様のことが2、3度続いたため、格子の編み目をさらに細かいものに替えて、再び祖母ザルを別の部屋に移動させた。

 おかげで体長約15センチだった赤ちゃんザルも、元気に育ち、今年から祖母ザルと一緒に暮らすようになった。現在は体長が約40センチになり、抱こうとする祖母ザルから素早く身をかわせるまでに成長した。

 子ザルは好奇心旺盛で、掃除に使うホースをかんだり、いじったりするといい、祭田さんから「こらーっ」と叱られることもしばしばだ。祭田さんは「サルが元気で長生きできるよう、健康管理をしっかりしていきたい。私はここのサルにとっては、ボスの上のボスですから」と目を細めている。(佐藤祐理)

2018年06月20日 15時16分
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