早朝3時開始のベルギー戦は30・8%を記録
https://c799eb2b0cad47596bf7b1e050e83426.cdnext.stream.ne.jp/img/article/000/232/667/cc80a80faf88f13da21a6468e1318efb20180705101752271_262_262.jpg

「数字はいいんですけどね……」

 苦笑いを浮かべてこう言うのは、在京キー局の関係者。ロシアW杯での日本戦が軒並み高視聴率を叩き出したが、「それでも赤字ですから」というのである。

 確かに、数字はいい。日本が2点を先制しながら大逆転負けを喫した決勝トーナメントの1回戦(対ベルギー)は、深夜3時キックオフだったにもかかわらず、平均視聴率30・8%を記録(ビデオリサーチ調べ=関東地区、以下数字は同)。1次リーグも午後9時開始のコロンビア戦が48・7%、深夜0時開始のセネガル戦が30・9%、午後11時開始のポーランド戦が44・2%と高視聴率だったが、冒頭の関係者がこう続けるのだ。
 
 「ロシア大会で日本のテレビ局が支払う放映権料は約600億円。前回ブラジル大会が400億円でしたから、200億円も値上がりました。暴騰する放映権料は、テレビ局の経営を圧迫しています。すでに2010年南ア大会から民放局は採算が取れず赤字に陥っており、今回のロシア大会からはCS局はおろか、民放のテレビ東京までが撤退する事態に追い込まれました」

  放映権料の高騰は権利を狙うネット事業者の参入も影響しており、民放連の井上弘前会長(TBSテレビ名誉会長)は今年1月、「W杯はすでに赤字。メディア権料が高騰するのは大変悩ましい問題だ」と話していた。たとえば中国では、国営テレビのCCTVに加え、大手IT企業の「アリババ」がネット配信を行っている。

■W杯中は受信料徴収が一層強化か

 そこでNHKである。

 広告収入とコンテンツ収入で成り立っている民放と違い、NHKは国民が支払う受信料が収入の柱だ。

 「NHKはロシアW杯の全64試合中32試合を生中継。BSでは全試合を録画放送する。当然、NHKの負担分は大きい。前回ブラジル大会ではNHKと民放の負担比率が7対3といわれた。これに当てはめると、NHKは今回も420億円もの巨額なカネを支払っていることになる。ロシアにスタッフを派遣するなど制作費もバカにならない。動画配信アプリも無料で提供している。赤字は間違いないでしょう」(別の民放関係者)

 だからか、NHK周辺には「W杯期間は戸別訪問などでの受信料の徴収が一層強化されている」との声もある。NHKの17年度の受信料収入は過去最高の6914億円となったが、W杯の放映権料だけで6%も占める。NHKの負担増は最終的に国民にはね返る。

 たとえば、日本代表の出ない深夜3時からの試合をテレビにかじりついて見るような視聴者は少ない。NHKが中継した6月16日午前3時開始のポルトガル対スペインは大会屈指の好カードでありながら、5・1%。この時間帯としては異例だが、あくまで5%に過ぎない。

 全試合を中継することが公共放送としての使命とは思えないが……。

2018年7月6日
日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/232667/1