西日本豪雨の影響で、愛媛県西予(せいよ)市野村町では浸水被害で5人が死亡した。上流のダムでは、下流に流される水が90分間で約4倍に増えていた。国土交通省は10日、住民への周知は適切だったとして当時の対応を明らかにしたが、同様のリスクは各地に潜んでいる。

 大雨が続く7日朝、愛媛県西予市野村町を流れる肱(ひじ)川の水かさが、一気に増えた。水流が堤防を越え、約650戸が浸水。住民5人が命を落とした。当時の様子を住民はこう表現する。

 「津波が襲ってくるようだった」

 その直前、約2キロ上流にある多目的の野村ダム(高さ60メートル、長さ300メートル)の放流量が急増していた。

 国土交通省四国地方整備局によると、午前6時20分にダムは満水になりかけていた。当時、毎秒439立方メートルを放流していたが、上流から1279立方メートルが流れ込み、あふれる危険が高まっていた。放流量を増やし、午前7時50分には4倍の1797立方メートルに達した。流入量はその10分前に、過去最高の2・4倍にあたる約1940立方メートルまで増えていた。

 流入量まで放流量を増やす措置は「異常洪水時防災操作」という。

 西予市によると、整備局からこの操作を始める見込みを最初に伝えられたのは7日未明のこと。避難情報の検討をした後、午前5時10分に防災行政無線で住民に避難指示を周知した。

 「川の増水により危険ですので避難して下さい」

 午前5時15分には、野村ダム管理所の11カ所の警報局が順に放水を知らせるサイレンを響かせた。

 ただ、住民の女性(60)は「いつもなら空襲警報のようなサイレンの音がするのに、今回は全く聞こえなかった」と証言する。雨音が強く、避難指示は家庭にある防災無線で知った。

 西予市は消防団に頼み、避難指示と同時に川の近くの家を戸別に回った。亡くなった82歳と74歳の夫婦の家にも訪ねていたという。

 西予市危機管理課の垣内俊樹課長は「ダムの放流量を増やしたことや、観測史上1位の雨量だったことが、広域の浸水につながったとみられる」と話す。

 今回の対応について、整備局河川管理課は「河川法に定められた操作規則に基づいて対応した」と説明する。国交省によると、豪雨に備えて3日前の4日からダムの水位を下げ、雨水を貯留できる量を350万立方メートルから600万立方メートルまで増やした。豪雨が降り始めた後は満水近くになるまで放流量を抑えたという。担当者は「雨が強まってからも河川の水位を上げないことで、住民が避難する時間を稼げた」と説明する。

 石井啓一・国交相は10日の閣議後会見で「西予市に対して数次にわたって情報提供を行うとともに一般住民への周知を行った」と述べ、適切な対応だったとの認識を示した。(高木智也、大川洋輔、岡戸佑樹)

■「ダムなければ被害拡大」「地域との訓練大切」

 放流急増後、浸水被害が起きた…残り:777文字/全文:1971文字

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2018年7月11日09時35分
朝日新聞デジタル ※全文は会員登録をしてお読みいただけます
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