http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56661
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筆者が問題にしたい報道は、7月21日、TBSの「新・情報7days」である。
番組の中で、さらにキャスターの安住紳一郎が「カジノ法案が通るくらいなら、パチンコ屋さんにも頑張って欲しいですね」
と述べたことは、大きな問題があると思う。

IR法体系をみると、カジノを扱う官庁は、主が国交省でサブが内閣府になっていることが分かる。

現在のいわゆる「ギャンブル」業界には、パチンコなどの民間業界が担うものと、役人(省庁)が担う公営の二種がある。
後者の「官製ギャンブル」は、各省がそれぞれ領地を分け合っており、これらは官僚の天下り先にもなっている。

今回のカジノは、民間業界であるが、国交省だけではなく、内閣府がはじめて「ギャンブル」に絡んでいる点が興味深い。

ちなみに、民間のパチンコ業界も警察官僚の天下り先の一つとして有名だ。
パチンコ業界は風俗営業適正化法の適用を受けているため、法的にはギャンブルと見なされていない。
天下りは、「見て見ぬふり」を受け入れられている、という側面がある。

こうした観点から考えると、パチンコ業界が、IR法からどのような影響を受けるだろうか、という興味深いテーマが浮かんでくる。

パチンコ業界に対しては、従来のように「ギャンブルではなく、警察官僚の管理下で容認される遊戯、という考え方」と、
「パチンコをギャンブルと位置づけ、代わりにカジノなどと一緒に法規制下に置く考え方」があった。海外では後者が一般的だし、
今回成立したIR法は後者なので、パチンコに対する新たな法規制への取り組みも兼ねている、という側面を持つ。

実際には、今回のIR法はカジノ規制についてしか言及していないので、パチンコまでは含まれなかった。
ただし、IR推進法に基づき今年7月6日に成立した「ギャンブル等依存症対策基本法」において、
パチンコ依存症もその他のギャンブルと同じものとして扱われ、規制対象となった。筆者はこれを評価している。

これは、パチンコをどのように理解するか、という本質的な問題になってくる。
筆者にとっては、パチンコという「実質的なギャンブル」が街中にあることにかなりの違和感を抱いている。

厚労省の調査によれば、日本人の成人の4.8%がギャンブル依存症とされている。
これは、米国1.6%、香港1.8%、韓国0.8%と比較しても高いという。パチンコなどが「駅前」などの身近な場所にあることが、
海外より依存症の数値が高い理由の一つであろう。

世界では、ギャンブルを街中から隔離し、管理して、関心のない国民を守る
というスタンスだ。

さて、今回IR法が成立したことで、カジノが日本に導入されることになれば、
パチンコも世界標準の規制に近づかなければならなくなるだろう。
IR法がなくとも、そうした方向に向かうべきだという議論はあるが、実際問題、パチンコ業界には強固な利権があり、それができなった。
そうした経緯も考えれば、今回のIR法は「ギャンブル対策に一歩前進」というべきだ。

IR法に反対する者は、単純にカジノがケシカランという理由だけでなく、
パチンコ業界の利権を間接的に守っていることを、自覚しているのだろうか。

法案は出した、というアリバイ工作のためであるのがミエミエだ。本気の対案も出さないで、
IR法案に絶対反対というのは、パチンコ利権の擁護のためか、と疑われても仕方ないだろう。

そのあげく、冒頭のTBSのように「パチンコにも頑張ってほしい」と言っているのをみると、
一体この国の報道機関はどうなっているのかと思ってしまう。

もちろん、パチンコそのものの存在を否定するつもりはない。
しかし、カジノに反対している人が、パチンコ産業のもつ問題点には触れないのは、おかしいのではないか。

たとえば、パチンコは大きな産業であるが、脱税の多い業種でもある。
毎年国税庁から公表される「法人税等の調査事績の概要」をみると、
法人税の不正発見割合では毎年上位になっている。

次に来るのは、パチンコに対する課税である。すでに役人が管轄するギャンブルについては、
高い納付金が課せられている。
また今後、カジノに対しては、民間では30%の納付金が課せられる。

一方、パチンコ業者に対しては普通の法人税課税だけしかなされてこなかった。
これからは、パチンコ業者に対しても、カジノ並みの課税をすべきだ、という議論が起こってくるだろう。

IR法に反対する人たちは、なぜパチンコの「不自然な点」については黙認するのか。