「不急の時間外、控えて」 医師の働き方改革で 適切受診周知へ
毎日新聞2018年7月31日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180731/ddm/002/010/115000c

 医師の働き方改革に関連し、厚生労働省は来年度から、国民に対し「適切な医療機関のかかり方」を初めて周知する。医療機関などを通じ、身近なかかりつけ医を持つことなどを呼び掛ける。不急の時間外での診察が減るよう国民の意識を変える狙い。来年度予算の概算要求に関連経費を盛り込む。

 6月に成立した働き方改革関連法は残業時間の罰則付き上限規制を初めて設けたが、医師は2024年4月まで規制の対象から外された。一方、厚労省の16年の調査によると、病院の常勤医の4割が週60時間以上働いていた。法定労働時間(週40時間)を勘案すると、過労死の労災が認められる基準の目安となる「1カ月の残業80時間」に相当する。
 医師が長時間労働になりやすいのは「正当な理由なく患者を断ってはならない」という医師法上の「応招義務」があるからだ。厚労省は、医師の長時間労働是正には急を要しない診療時間外の診察や外来患者を減らすことが必要と判断した。
 具体的には、医療機関や自治体、健康保険組合など関係団体を通じ、病院に頼らず地域の診療所などをかかりつけ医とするよう促すほか、夜間・休日診療所の情報の提供、救急搬送などで受診する症状の目安などを周知する。企業に対しても、診療時間内に受診できる環境の整備や、従業員の家族の診療時に利用できる休暇の制度化などを求める。関係機関や企業を巻き込むことで国民意識への働き掛けを強める考えだ。
 省内に検討会を設け、国民に働き掛ける仕組み作りも検討する。例えば、小児科医不足の地域などでは深夜や軽症の受診を控え、医師の負担を軽減しようという市民の取り組みがある。こうした活動を全国に広げることなどが想定される。
 ただ、患者が必要な医療を受けにくくなる懸念もある。厚労省担当者は「過度な受診抑制にならないよう、身近なかかりつけ医を作って受診の相談をしてほしい」と話す。【酒井雅浩】