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原発事故に備えた電力会社の賠償額 引き上げ見送り
2018年8月7日 4時55分福島第一

原子力発電所などで事故が起きた際の賠償について、国の原子力委員会の専門部会は、福島第一原発の事故の賠償額が巨額になったことを受けて引き上げることなどを検討してきましたが、電力会社が事前に備えておく最大1200億円という賠償額の引き上げは見送られました。

6日、開かれた国の原子力委員会の専門部会では、原発事故の賠償額が8兆円と巨額に上りながら、事前に備えておく賠償額は最大1200億円で、額を引き上げるかどうかが話し合われました。

この中で賠償法を所管する文部科学省の担当者から国内外の保険市場を見るとすでに高額で、原発の安全対策が進み事故のリスクが下がっているといった意見が出され、電力会社が事前に備えておく最大1200億円という今の賠償額の引き上げは見送られ「引き続き慎重な検討が必要だ」とする報告書の案がまとめられました。

これについて電力会社の経営や賠償に詳しい龍谷大学の大島堅一教授は「事故のリスクを誰がどこまでカバーするのか。国民の負担にも関わることなのに、事業者の責任が福島の事故の前と変わっておらず問題だ」と話しています。

一方、報告書の案では、電力会社の賠償責任について無制限としている今の制度を維持することなども取りまとめられ、今後、一般からの意見を募集することになりました。

原発の賠償制度 ほかにも変更求める

国の原子力委員会の専門部会が取りまとめた報告書の案では、ほかにも原子力損害賠償制度の変更を求めています。

1つは、損害賠償をめぐる「時効の中断」です。これは、原発事故の損害賠償について紛争解決機関による和解が成立しないまま、損害賠償を請求できる3年の時効をすぎても、被害者が損害賠償を求めることができるものです。

すでに福島第一原発の事故の損害賠償については特例法として5年前に成立していますが、今回のケースに限らず和解に向けた仲介手続きでの時効の中断は、必要な措置だとして制度化を求めています。

また、報告書案では迅速で公平な賠償が行われるように、あらかじめ電力会社に対して、損害賠償への対応に関わる方針を作成し、公表することを義務づけるよう求めているほか、原発事故による避難指示などによって、被害者は当面の生活に困難を伴うと考えられることから、電力会社による賠償の仮払いが円滑に行われるよう枠組みを整備することなどを求めています。

これらについて、賠償の法律を所管する文部科学省は、改正に向けた検討を行っているということです。