●「被害者に補償したのかよ」という意見について

ーー「殺人未遂の被害者にお金を払ったのか?」という意見もありました。被害者にわたるであろう金額より、請求金額が大きいことを問題視しているようです。

仮に、今回死亡した被疑者に責任能力がなく、刑事上の責任は問われなかったとしても、民事責任を負う場合はあります。

逸失利益であれば、相続という構成を取ることになります。同時に賠償義務も相続することになりますから、遺族が被害者にお金を払わないとならない可能性があります。

そもそも、民事賠償をしていないとしても遺族が請求できないということにはなりません。

いずれにせよ、賠償金が得られた後の清算の問題は残るとしても、遺族が請求できないということにはなりません。

●加害者家族に対するバッシング

ーー加害者の家族に対するバッシングをどう考えたら良いのでしょうか。たとえば、殺人事件などの場合、家族が自殺してしまうこともあります。

今回のケースに限らず、加害者の親族というだけでバッシングを受けることもあります。その人の責任ではないことでバッシングを受けることは本来、あってはならないことです。

補償が受けられないことの是非について、司法の判断を仰ぐのは憲法で裁判を受ける権利として保障されたものです。

加害者が死亡したような場合には、民事賠償などは遺族が代わって行動を起こすほかありません。訴訟によって、加害者遺族が置かれた状況を変えていくきっかけにもなりますし、未決勾留されている被疑者の地位も含め、加害者の遺族が提訴したのは当然のことでした。

ーー今回のコメント欄の炎上は、よくある誤解と言えるのでしょうか?

そうだと思います。裁判で有罪判決が出る前は、あくまでも無罪推定がされること。遺族が慰謝料を請求するのは正当な権利であること。当事者ではないのに家族に対して、事件の責任を追及するのは筋違いと言っても良いものです。